教育福島0127号(1987年(S62)12月)-023page

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学習指導の展開

養護教育課

 

はじめに

 

心身に障害をもつ児童生徒の学習指導の展開に当たっては、単元(題材)の目標、指導内容の配列、さらには、指導方法の組織化等を児童生徒の実態を考慮しながら適切に定める必要がある。特に、障害に基づく種々の困難や発達の遅れを十分に把握し、それらを改善、克服するための学習活動の展開が必要であり、適切な目標の設定、学習活動内容の工夫、教材・教具の開発、指導体制の工夫等を行い、一人一人の教育的ニーズに応じた指導が展開できるように計画してゆくことが、心身障害児の学習指導の展開においては大切である。

今回は精神薄弱養護学校における生活単元学習を通して、指導方法の工夫のあり方を探ってみた。

生活単元学習とは、国語、算数等の各教科と道徳、特別活動、養護・訓練の各領域を合わせた指導形態であり、これら学校では、代表的なものである、この学習のねらいは、日常生活の中で実際に役立つ力の獲得にある。実際の学習活動では、共通の課題意識をもって、仲間と共同で取り組ませる場面、一人一人に合った活動に取り組ませる場面がある。この場合、児童生徒の障害の程度や知的発達等の遅れの状態に応じながら集団指導と個別指導を展開してゆくため適切な目標の設定、指導内容、方法の工夫が求められる。

県立大笹生養護学校一精神薄弱養護学校)では、一人一人の児童生徒に目標をもたせ、その目標を自力で達成できるような学習指導の実践に当たっている。ここに生活単元学習を通した例を紹介する。

 

生活単元学習の指導の実際

県立大笹生養護学校

 

一、はじめに

 

生活単元学習は領域・教科を合わせた指導の中核的な指導形態であり、活動を総合的に組織し、子ども自身が見通しをもって活動できるような学習内容を設定し、学校生活の中の主たる活動として位置づけている。

学習活動は生活上の課題を成就するための活動であり、その活動が発展的に向上することによって生活する力として身につくものであろう。

単元を構成するには子どもの生活を中心に、子ども自身の心の動きや発達の程度をふまえ、生活に根ざした活動が展開されるように努めている。

指導に当たっては子ども一人一人が生き生きと活動できるよう協力的な指導に配慮し、児童・教師が一体となって課題遂行に取り組み、自然な姿で指導がすすめられるようにしている。

本事例は小学部低学年の遊びを中心として構成された一事例である。

 

二、指導の実際

 

(一) 単元名、動物村のしんかんせん

(二) 単元設定の理由

本単元は、教師の作ったぺープサート「どうぶつ村のしんかんせん」を見て、動物のセリフをいっしょに言ったり、動物の動作を模倣したり、鳴き声と動物のぺープサートをマッチングさせたりしながら、実際に自分たちも、のりもの遊びをして楽しみながらすすめていく。

昨年度、小学部低学年グループでは大きなキャスターのついた「バス」を作って遊園地遊びを経験してきている。この「バス」は子どもたちにも好評で、今年度になっても自由時間に友だちをのせて引いたり、また、ひとりで遊ぶことが難しい子どもも、バスを見つけると近づいて乗ったりしているそうした二年生の動きに引きづられるように一年生もその中に入ってバスで遊ぶ姿が見られるようになってきた。また、子どもたちは近くの牧場に牛を見にいくことを楽しみにしていたり、運動会の種目「どうぶつランドへいこう」の練習に取り組む過程で動物の動作模倣をしたりして動物の名前を覚えるなど、身近な動物に対して親しみを持ちはじめている。

そこで子どもたちが親しんでいる動物が、新幹線に乗って遊ぶという自作のぺープサート劇「どうぶつ村のしんかんせん」を見せることで、いろいろな動きやことばを引き出しながら遊びのイメージをふくらませ、子どもたちの大好きなのりもの遊びへと発展させていきたいと考え本単元を設定した。

「のりもの遊び」は、どの子どもも楽しんで遊べると同時に「乗りたい」という意欲を基盤にして、一人一人の子どもに応じた課題を持たせることができる。例えば、目的的行動が少なく意思表示の仕方が微弱な子どもや体の動きの未発達な子どもには「乗りたい」という気持ちを表情や動作で表わすこと、新幹線のドアの開閉、自分で乗り降りする動きを引き出すことなどができる。また肩を寄せあって友だちといっしょに乗ったり、押したり順番を待つなどの役割を交代して、子ども同士が互いにかかわり合いながら遊ぶことができる。更に、切符のやりとりや駅で待つなどの約束を理解して遊びへと活動を発展させることができる。そして子どもによっては、ぺープサートで出てきたことば(「のせて」「いいよ」「出発」など)を動作と結びつけて使えるようにすることも期待できるであろう。

 

 

 


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