教育福島0127号(1987年(S62)12月)-038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

九パーセントと大好評で、性教育のあり方について考えさせられた。子どもに質問された時の対応ができるようになった。など、大変反響があった。

 

五、今後の課題

1) 性に関する指導を実施するに当たり、今後は、教職員の共通理解を図りながら年間計画を作成し、位置づけを明確にする必要がある。

2) 児童・生徒の発育には、個人差があることから、一斉指導とあわせて個別指導についても、十分考慮する必要がある。

3) 指導の効果をさらに高めるために、資料の精選を図るなど工夫する必要がある。

 

おわりに

 

女子のアンケートの結果から、年々性に関する意識がかなり高くなってきていることがわかる。

それは、現代の子どもたちの身体の発育が早熟化していることと、マスコミの影響などにより、性的関心の高まりを示し、心理面にも大きな変化が起きているからではないかと思われる。

したがって、日一日と急成長していく児童の実態を的確にとらえた性教育のあり方について、研究を重ねるとともに、保護者に対する啓蒙活動も積極的に展開するなど、学校と家庭が一体となった性教育の推進に努めていきたい。

 

本校における性教育の実践“いっぱちランドの生教育”

郡山市立郡山第一中学校

 

はじめに

 

今、子どもをとりまく文化的環境は、テレビ、雑誌ともに性的描写が氾濫し、いたずらに性的好奇心をあおっている。また、体位の向上にともない性的成熟度も早まり、少女の性非行の問題を中心に、性教育の必要性が叫ばれているように思われる。しかし、子どもの口にすることばや性的関心という現象面にばかり目を奪われていては、問題の解決にはならない。

現代は、物質的に豊かで便利な反面、いのちの尊厳ということが非常にとらえにくい時代でもある。本来、性とは「愛」であり、「いのちの創造」ではないだろうか。インドのタゴールという詩人の詩「はじめ」に次のようなことばがある。

あさのひかりといっしょにうまれた

天からのはじめてのいとし子よ

せかいのいのちの川にうかんで

ながれて とうとう わたしの

こころのきしべに のりあげたのよ

四十五億年の地球の歴史の中で、生命が誕生し、綿々と受け継がれてきた“いのちの川”に浮かんだ自分のいのちと、新しく生まれてくるいのちという観点から、性というものをとらえてみる必要があると思う。

一昨年、当時一年八組(愛称いっぱちランド)で、道徳や学級指導および帰りの学級会活動時に、次のような“生教育”を通して性教育の実践をしたので紹介する。

 

一、学習全体の構想

1、自分の歴史をふりかえり、自分という人間について考える

★私の歴史をふり返る。

★詩「奈々子に」を読む。

★現在の自分を見つめる。

2、思春期と心身の変化について正しく知る

★小説「女の子」を読む。

★自分らしさを見つける旅へのメッセージをつくる。

★思春期におけるからだの変化を知る。

3、いのちの誕生のすばらしさに感動する

★いのちの誕生を知る。〈生物の進化といのちの伝承〉

★いのちの誕生について発表する。〈魚類・両生類・……哺乳類〉

★いのちの誕生について学ぶ。

★いのち、光り輝くものを知る。

4、自分のいのちをどう輝かせるか、決意をまとめる

★詩「きびしい道へいけ」を読む。

★いのちの輝きを学ぶ。

 

二、指導の実際

教師「さあ今日は、我々人間のいのちの誕生について考えよう。では、年表を見ながら生物のいのちの伝承についてふりかえってみよう……」

(注 生物の進化の年表と、生徒研究のまとめを掲示しておいた)

「生命が誕生したのは……、では前の時間の感想を発表してもらおう」

生徒「いのちを生むために、生物は一生懸命がんばっているんだなあと思った。たくさんの卵を生んでも育つものは少ない。ほとんど死んでしまうのだ、それでもみんな一生懸命がんばっているんだ。ずっとずっと気が遠くなるような昔から今まで、子どもを生んで殖やしてきたなんて、本当にえらいなと思った。いのちをかけて子どもを生むのがすばらしいと思った」

教師「うん、そうだね。みんな新しいいのちを生むために真剣だったね。さて、これからみんなにすばらしいテープを聞かせるからね」

『ドンドンドン……(胎児の心音)

がんばって……もうすぐだよ

……オギャ、オギャア、オギャア

教師「ほら、今、赤ちゃんが生まれたところだよ。みんなもこうして生まれてきたんだね。……さて、いのちのもとは何だろう?」

生徒「おとうさんとおかあさん」

教師「うん、お父さんとお母さん、そうだね。愛する心がいのちのもとなんだね。ひとりの男性とひとりの女性が

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。