教育福島0127号(1987年(S62)12月)-048page

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養護教育センター通信

 

精神薄弱児教育における「生活科」の指導

 

障害をのりこえ社会参加をめざそう

 

はじめに

 

最近の教育雑誌や新聞の報道には小学校の低学年の教科として、「生活科」(仮称)を新設しようという動きが目立つようになり、関係者から注目されてきています。

生活科については、内容や程度の違いはありますが、精神薄弱児の教育分野では、既に昭和四十六年改訂の精神薄弱養護学校学習指導要領から、新しい教科として「生活科」が設けられております。

そこで今回は、精神薄弱児教育における「生活科」について紹介することにします。

 

一、生活科設置の趣旨.

精神薄弱養護学校の小学部では、昭和四十六年度より、各教科を生活、国語、算数、音楽、図画工作及び体育の六教科で編成することになりました。新しい教科「生活科」が設けられ、社会、理科及び家庭の三教科が廃止され保健に関する内容が、体育から削除されています。

このように、各教科の編成様式に大きな修正が加えられたのは、従前の教科の体系では、精神薄弱教育の対象となる児童にとって、必要な内容を適切に選択・組織できなくなってきたからです。すなわち、生活科は次のような考えから設置されたわけです。

(一) 精神薄弱児の能力・特性(抽象と一般化の能力の未発達)、 興味・関心などからみて、従前の教科になじみにくくなってきた。

(二) 精神薄弱養護学校に在学する児童の精神遅滞の程度が重くなり、いわゆる教科指導が困難になってきた。

(三) 精神薄弱児が社会自立するための最小限必要な経験内容(身辺処理、対人関係、集団参加、仕事や役割分担、簡単な社会事象の理解等)は、従前の各教科のくくりではなく、新たな視点からの再編成が必要になつてきた。

 

二、 「生活科」の目標と内容

昭和五十四年改訂の「盲学校・聾学校及び養護学校小学部・中学部学習指導要領」の中に、精神薄弱児を教育する養護学校での生活科の目標及び内容は、次のように定められています。

1、 「生活科」の目標

日常生活の基本的な習慣を身につけ集団生活への参加に必要な態度や技能を養うとともに、家庭・社会の様子や自然の事物・事象について関心を深め自立的な生活をするための基礎的能力と態度を育てる。

2、 「生活科」の内容

(1) 身辺生活の処理を求めたり、自分で処理したりする。

(2) 健康で安全な生活をするよう心掛ける。

(3) 友だちとつながりをもって、仲良く遊ぶ。

(4) 身近な人と自分との関係を理解し、簡単な応対などをする。

(5) 家庭や学校における集団生活に参加し、簡単な役割を果たす。

(6) 日常生活で、簡単な手伝いや仕事をする。

(7) 日常生活に関係の深い家庭、学校及び社会の簡単な決まりを理解する。

(8) 金銭の取り扱いに慣れ、簡単な買物をする。

(9) 身近な自然の事物・現象に興味や関心を持ち、その特徴や変化の様子を理解する。

(10) 家庭や社会の様子に興味や関心を持ち、その働きを理解する。

(11) 日常生活と関係の深い公共の施設・機関に慣れ、また、それを利用する。

以上のことから生活科は、学校生活社会生活及び家庭生活に必要な知識・技能及び態度を身につけるのに必要な内容で構成する教科であるということができます。

また、その内容は、前述のとおりですが、特殊教育諸学校学習指導要領解説−養護学校(精神薄弱教育)編−には、さらに詳しく、具体的に示されています。

ここでは表1・2により、その一部だけを紹介します。

 

表1 学習指導要領解説に示されている具体内容の項目

表1 学習指導要領解説に示されている具体内容の項目

 

 

 


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