教育福島0127号(1987年(S62)12月)-049page

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表2 生活科の具体的内容

表2 生活科の具体的内容

 

これらの表では、具体的内容が三段階に分けて示されていますが、これは必ずしも低学年・中学年・高学年で学習することを意味するものではなく、これを目安に児童の能力・発達状態に合わせて、学習内容を選択・組織することが必要になってきます。

 

三、 「生活科」の指導の形態について

精神薄弱児教育では、小学校の通常の学級で行われているように、教科別に指導することは、その障害の特性から、必ずしもよい結果が得られないといわれます。そのため、前項のように教科別に示された内容を児童の興味・関心なども考慮して、能動的な活動が展開しやすい形に再構成し、指導することになります。こうした指導の形態を、領域(各教科、道徳、特別活動、養護・訓練)・教科(生活、国語、算数等)を合わせた指導と呼んでおり、日常生活の指導、生活単元学習及び作業学習などがこれに当たります。精神薄弱児教育では、児童の発達の未分化性から生活科の内容については、この指導形態による指導が望ましいといわれています。

 

四、 「生活科」の取り扱い方と指導のねらい

生活科の内容の指導に当たっては、前述のように単独の教科として指導するということはなく、領域・教科を合わせた形態をとることになります。これは、精神薄弱児に目的性や意図性が認められても、極めて微弱なため、子どもの生活から遊離した活動を持ち込んでも、知識・技能などの習得が断片的になり、子どもの一人一人が主体的に生活を築いていくための力を育てることにはならないからです。そこで、子どもの生活に密着した実際的な状況下での指導が重要な意味を持ってくるのです。

一般の小学校の生活科の目標は、教育課程審議会の「中間のまとめ」に述べられておりますが、「具体的な活動や体験を通して、自分と身近な社会や自然とのかかわりに関心をもち、自分自身や自分の生活について考えさせるとともに、その過程において生活上必要な習慣や技能を身に付けさせ、自立への基礎を養う」となっています。

精神薄弱児の教育で、領域・教科を合わせた指導の形態による指導が必要なのは、発達的に系統化された内容を順次指導するだけでは、主体的な学習が成立しにくく、また、指導が固定化すると個別的な判断力が伴わず、生活力とは無関係な常同化した行動にとどまってしまう危険が大きいからです。

今般、小学校の低学年に新設の動きのある生活科は、学問(教科)からではなく生活からの発想、教科(分化)からではなく未分化からの発想、間接体験(知識)学習ではなく直接体験(事実)からの学習、教科別指導ではなく総合的指導といった点にその特色があります。そうなるとすれば、精神薄弱児教育における指導の在り方と共通点も多いということができます。

 

生活単元学習の指導「さつまいもをうえよう」

生活単元学習の指導「さつまいもをうえよう」

 

生活科の内容が多く含まれる宿泊学習

生活科の内容が多く含まれる宿泊学習

 

おわりに

学習成立の基盤は、活動の能動性にあるとは、心理学の教えるところです。これは、指導実践上欠くことのできない視点でもあります。

知識や技能を身に付けるということは、少なくともそれを子ども自身が主体的に取り込んで、それぞれの認知や思考の網の目にしっかりと位置づけるという活動が伴っていなければなりません。つまり、それまで身につけた認知システム、思考システムと有機的に絡み合うような指導が展開されなければならないということです。

生活科の指導に限らず、知的発達が未分化の状態にある子どもを対象とした場合、このことは忘れてはならない大事なことだと言えます。

 

 

 


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