教育福島0127号(1987年(S62)12月)-057page

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博物館だより

伝馬船

零細な沿岸漁業を支える

太平洋沿岸の浜通り地方は、海岸線が長く、近世には半漁半農の小集落が点在していました。原釜・請戸-四倉・江名・中之作・小名浜などの漁港のほかは、小さな港ばかりでした。

漁師たちは「伝馬船」とか「一貫丸」とよばれる小さな船をあやつり、ヒラメ・スズキ・カレイなどの魚類のほか、ホッキ・アワビなどの貝類、ワカメなどの海藻類をとって生活を営んでおりました。江戸後期ごろになると、九十九里浜などから地曳網・張逆網などの大型漁網が導入され、漁船も大型化し、沿岸から沖合へと漁場も変わっていきました。大型漁船・漁具による漁法は、網元など大経営によるもので、一般には伝馬船による零細漁法でした。

総合展示・近世「海のなりわい」に展示している伝馬船は、双葉郡浪江町請戸で製作されたものです。請戸では、昭和三十年ごろまで、伝馬船によるスズキ・ヒラメなどの一本釣・はえ縄漁、ワカメとりなど、四季折々に伝統漁法が行われてきました。漁場までは帆を立てて往復し、漁場に着くと櫓でこぎ、漁を行います。いわき地方では、同型の伝馬船で潜水によるアワビ漁が行われてきました。漁携中の伝馬船内は、狭い仕事場となり、機能的に使用されます。

海上の仕事は危険な作業で、漁師たちは海上安全や大漁を祈願し「船霊様」とよぶ神をまつってきました。そのほか、伝馬船上に展、爪された漁具類は、『明治十二年水産旧慣調』に記載された漁具を復製したもので、近世の漁法を知り得る貴重な資料です。

館内に展示されている「伝馬船」

館内に展示されている「伝馬船」

漁場へ向かう伝馬船(61年、浪江町請戸にて)

漁場へ向かう伝馬船(61年、浪江町請戸にて)

企画展案内

「陸奥の古瓦」展

会期 昭和六十三年一月二十三日〜三月三十一日

場所 県立博物館

この企画展では、本県に分布する様々な古瓦を一堂に集め、大和地方や関東地方・東北各地の瓦を比較することによって、それぞれの文様の系譜を明らかにします。それらの瓦によって象徴される古代律令国家が本県内に浸透する状況を示すことを目的に展示します。展示資料は地畿地方から秋田県におよび、約三百五十点です。


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