教育福島0130号(1988年(S63)04月)-026page

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3)児童・保護者・教師の共働活動の実施

学校参観日の授業・PTA奉仕作業等に、共働活動を位置づけ、当学習についての理解を深めることに努めた。

 

二 研究成果の要旨

(一) 児童相互の人間関係の向上

当学習は、そのほとんどが、野外における継続的な肉体作業を伴う。

その中で、児童は、教室内ではうかがい知れない姿を現すが、教師が、児童の望ましい態度・行動・心情を見出し、それを賞揚することにより、それが、児童にとって、新しい人間的な価値の認識となり、児童が相互の人間の良さを知り、認め合うことにつながった。また、作業・活動は、そのほとんどが協同化・協力化がなければ成立しないものであるとともに、収穫の喜び等も共に分かち合うかたちになることが多い。苦しみと共に喜びを分かち合うことが、児童相互の人間的結びつきを強める基盤をなしたと考えている。

(二)「慣れ」から「喜び」へ

毎日働くことにより、働くことに対しての慣れが生じ、それを苦にしなくなる傾向が極めて強く見られた。日誌作文等からは、働いた後の充実感・そう快感・内的報酬を感じている児童が増加していることがうかがえた。

毎朝の三十分活動一晴耕雨読一は、この意味で効果的であったといえる。

(三) 活動の完結による動機付けの強化

育てる 収穫する 食べる(菊においては開花)までの一連の活動が完結することにより、苦労が喜びに変わり、それが次回の活動への大きな動機づけとなった。活動の結果(収穫・食べる)を、よい形(成功)に仕上げることが重要であるといえよう。

(四) 家族・老人との結びつきの強化

「ふるさと文化継承活動」、「持ち帰った収穫物」、「親との共働活動」、「働くことの苦しさ」等を通して、家族とのふれあい・会話の機会が増えるとともに、家族や年寄りへの感謝や思・いやり・尊敬の心情等が強まった。

(五)学習意欲・活動意欲の向上と活動の場と機会の確保

当学習そのもの・その素材・生産物等を教材化することにより、児童に極めて強い学習意欲・活動意欲を抱かせ、それを維持することができた。また、ほとんどが野外で行われる当学習は、教室の授業では活発さを見せない児童にも、充分に活動できる場と機会を与えた。

(六) 教材開発意欲の向上

当学習を教材化することへの教師の意欲が高まり、教材化への試みが数多くなされている。(前記(七)(3)参照)

(七) 地域の持つ教育力の復活

外部諸機関・地域住民と学校のコミュニケーションが高まるとともに、学校・教師が、外部に対して児童と共に教えを請うという、開かれた教育活動が多くなった。これは、外部にとっては、自分たちが有している技術等が、学校教育のうえでこんなに役に立つのかという驚きと喜び、自信につながり、地域の持つ教育力の復活に大きな影響を与えた。

(八) 児童に対する人間的な見方の視点の拡大とふれ合いの増大

教室内ではうかがい知れない、野外における児童の能力・心情等の発現は、教師の児童に対する人間的な見方の視点に広がりと深さを与えるとともに、児童との対話・心情的なふれ合いの機会を増加させた。

(九) 施設設備の充実

地域住民の学校教育に対する理解が深まるとともに、学校に対する協力態勢も強まり、資材・技術等の提供が相次ぎ、当学習に関する施設設備が極めて充実した。

この二年間に設置された施設設備

○ 野外学習場二面

○ 野外炊飯場(屋根付、かまど四基)

○ 農具小屋

○ 昆虫飼育舎

○ 花壇四面(百三十u)

○ 菊栽培棚(四百鉢栽培可能)

○ 鑑賞用地(約八u)

 

三 今後の課題

(一) 発達段階・他領域との関連・活動時間等との関係から、作物の種類・数等をさらに吟味し、限られた時間内に活動を完結させるための見極めが必要である。

○ 児童の心情面への働きかけを意図し、それを位置づけた活動計画の作成、心情・態度面について評価方法の研究が必要である。

(三) 種蒔きから収穫、食べるまでの一連の活動を教科等と関連づけながら、できるだけ総合的な活動へ高め、児童の能力を多方面にわたって向上させるための工夫・配慮が、さらに必要である。

なお、六月二十八日(火)に、学習の活動化・体験化をねらい、勤労生産学習における教材開発の研究の一端を自主公開する予定です。

 

先生は村のおじさん(ふるさと文化継承活動)

先生は村のおじさん(ふるさと文化継承活動)

 

三十五ページに続く

 

 

 


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