教育福島0130号(1988年(S63)04月)-038page
3)生徒の活動の変容に視点を定めた評価のあり方について検討した。
三、研究仮説
学校の教育活動全体において、協力したり自ら取り組んだりする場を設定すると共に、作物栽培活動を生徒と教師が共に推進し、働く喜びを味わわせることにより、目標に向かって協力し合い進んで実践する生徒が育成できるであろう。
○ 勤労生産学習について 仙崎武氏
(文教大教授)は、理念的側面を「スキル」「ワーク」「セルフ」「ライフ」の四点に視点をおいている。これからの理念的方向としては、「セルフ」を重点にしながら、「ライフ」を志向すべきであり、そのための実践的側面として特定の時間枠、時間帯の中だけで行うのではなく、核となる時間帯や機会を設定しながら、フォーマルな学校教育活動の一環として、すべての教科、道徳、特別活動に位置づける必要があると提唱している。
本校の研究主題もその方向で理念的には進めようと考え、三領域の中に、協力学習、ペア学習や生徒自ら取り組む場や、学び方を学ぶ場などを設定し、主題にせまることにした。
協力したり、自ら取り組むことのできる栽培活動にするねらいから、活動の単位、グループの構成を工夫し、一年〜三年の学年枠をはずし、異年齢のグループ単位の作業活動を進めることにした。
また、先進校の研究にはいずれも、「働くことの苦しみの峠」を経験することが紹介されており、本校では上記・の手だてに加え、師弟同行の姿を示すことにより、心理的側面からの支えを持たせることにした。
○「協力し合い実践する」については知的発達だけに偏らず、他者とのよいかかわりを育てるため、基底として寛容を重視することにした。
○「進んで実践する」については、活動の各過程にたあらわれる、「自主性」「創意・工夫」「計画性」「合理性」「勤労意欲」「根気強さ」などからとらえることにした。
四、研究の実際
1) 研究経過の概要
研究を開始したとき、本校は統合四年目を迎えたところであり、生徒相互の人間関係にもわだかまりがなくなってきていた。
はじめに、全体構想を作成し、各部門を統合することにした。また、日課表の中に、勤労生産学習の中心的な場となる「創意ある教育活動の時間」を月曜日と木曜日の六校時に計二単位時間位置づけた。なお、勤労生産学習の作業活動は天候に左右されることも多いので、運営に当たっては弾力的に実施するようにした。
一年次の中間発表会の後、今後の進め方について検討し、次のように改善を図ることにした。
1)「生徒の活動のあり方」について
生徒が自ら意欲的に活動する姿の実現には、企画、立案、運営に生徒を参加させる必要がある。その方法としてすでに組織されている勤労生産委員会における話し合い活動を重視することにし、冬季の間に数回の会議を開いた、
2)「教師の取り組み方」について
研究にかかわる反省、評価を自由記述で実施したが数多くの改善案、要望が出された。これをKJ法的にまとめ「計画」「組織」「栽培規模」「生徒の活動班」の各視点から改善の方向を明らかにした。
3)「保護者との連携」について
この研究の推進には保護者の協力が必要である。しかしながら、これまでこの研究については、ねらいや内容を保護者に広く知らせる工夫はあまりしてこなかった。そこで「勤労生産だより」を発行することにより連携を更に密にしていくことにした。
二年次には、前年の反省をもとにした取り組みが実施され、栽培活動も昨年度の経験を教師生徒共に生かすことができ、教育活動全体の中によく調和するようになってきた。
2) 教科、道徳、特別活動の取り組み
1)「目標に向かって協力し合い、進んで実践する」ことでは
○ 教科において、助け合い学習の観点から、ペア学習やグループ学習の強化を図った。また、生徒の活動を主体にした授業を数多く実践した。
○ 道徳においては、「集団生活の向上」「積極生、強い意志」「自主性、責任感」の各項目に特に力を入れた。
○ 特別活動においては、個々の場面で、生徒同士及び生徒対教師の人間関係をもとに、生徒活動の内容について、特に段階的な指導に力を入れるようにした。
2)勤労及び生産そのものにかかわることでは
○ 教科において、国語科の作文素材や、社会科の地理的分野の各時代の人々の生活や産業、公的分野の生活環境と資源、理科の植物の世界や生
表1.勤労生産的活動の主な内容
(創意を生かした教育活動の時間)