教育福島0131号(1988年(S63)06月)-006page
提言
一寸の光陰ファミコン遊び易し
日本放送協会放送文化調査研究所
世論調査部 主任研究員
多田哲朗
[筆者紹介]
多田哲朗・ただてつろう
昭和十年
東京に生まれる
昭和二十九年
福島県立原町高等学校卒業
同 年東京大学文科1)類入学
昭和三十四年
東京大学法学部卒業
同年
NHK入局
中央研修所勤務等を経てNHK世論調査部主任研究員(現職)
近年は講師として活動する機会が多く、テーマは多岐にわたる・最近の主な講演テーマ
『学生から社会人へ』
『職場の人間関係』、
『コミュニケーション』
『リーダーシップ』
『高齢化社会を生きる』 等
少年老い易く学成り難し。
一寸の光陰軽んずべからず。
未だ覚めず池塘春草の夢。
階前の梧葉すでに秋声。(朱◆)
この漢詩の作者は朱◆。宋の時代の最大の儒学者である。後世、朱子の敬称で呼ばれた。
詩の後半の意味は「池の塘(つつみ)に春の若草の萌えるような楽しい夢が、まだ覚めきらないうちに、はや、階一きざはし)の前の梧葉に秋風が吹いて来た。少年時代を楽しんでいるうち、はや、老境が迫って来る。」というものである。
少年老い易く‥‥…は、古今の名言だが、今の若者には死言なのかも知れない。そこで戯れに作ったのが、「一寸の光陰ファミコン遊び易し」である。
時間ほど貴重なものはないが、時間ほど浪費しやすいものもない。時間の貴重さを痛切に感じるのは、学生では受験勉強の追い込みのときであろうが、いったん、大学にでも入学してしまうと、キャンパスを国民休暇村として過ごしてしまう。
NHKに勤務して三十年近くなった。そのうち、一番長かった職場は職員の教育を行う研修所で、二回の勤務で、延べ十六年にもなる。新人の教育も教室で五年間担当した。すばらしい新人にも出会った。