教育福島0132号(1988年(S63)07月)-009page

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ばならない」と言われるが、そのために教師は、児童生徒一人一人のもつ能力、適性を的確に把握し、その実態に即して指導方法を工夫することが必要である。

1) 個々の学習状況の把握

それぞれの児童生徒は、学習内容の習得状況、学習速度、方法等に個人差がある。また、学年が進むにつれて、個人差が大きくなる傾向にあるが、指導に当たっては、一人一人の児童生徒の学習状況を観察、調査、面接等で多面的に把握することが必要である。特に、学習不適応や学業不振で悩みを持つ児童生徒については、教育相談を計画的に行い、内面的な心情の理解と適切な指導援助が望まれる。

2)個に応じた学習指導の工夫

児童生徒一人一人の個性を尊重し、個人差に応じた指導をするためには、次の点について配慮することが大切である。

1)教師主導の一斉・画一的な指導から脱し、児童生徒の論理や主体性を大切にする。

2)一人学習やグループ学習の形態を取り入れるなど学習形態の最適化を図る。

3)常に学習内容の習得の状況を把握し、個を生かす発問や板書などの指導方法の改善を図る。

4)個に即して学習課題や到達目標を設定し、学習時間や学習量の調整を図る。

5)視聴覚教材の開発やコンピュータ等の教育機器の活用により指導の改善を図る。

今後の急激な社会の変化を考えるとこれからの義務教育においては、基礎的、基本的な内容を確実に習得させるとともに、一人一人の児童生徒の能力適性に応じた教育を行うことにより、主体的に社会の変化に対応し得るよう自ら学ぶ力や創造的な能力などを育成することが重視されなければならないと考えられる。

 

3、主体的な学習態度を育てる授業

変化の激しい社会の動きに主体的に対応し、たくましく生きていける人間を育成するためには、主体的な学習態度の育成が不可欠である。今、教師に求められていることは、児童生徒の興味や欲求を理解し、生き生きと学習活動に取り組めるような授業の展開であり、主体性を高める授業の工夫である。

(1) 学習意欲を高める工夫

主体的な学習態度を育てるために大切なものは、児童生徒の学習への意欲である。教師は児童生徒にやる気を起こさせるためにいろいろ工夫しているが、基本的には次の三点が重要である。

1)学習への動機づけを工夫する。

児童生徒の知的好奇心に訴え、強い驚き、疑問を引き起こし、調べたり、考えたりしたくてたまらない心情にすることが必要である。そのためには、児童生徒の興味、関心を十分把握し、意欲を誘発させる教材開発とその提示方法の工夫が大切である。

2)「分かった」「できた」という体験をさせる。

児童生徒は、自己の目標を達成したとき、また「分かった」「できた」等の喜びを味わうことができたとき、大きな満足感を持ち、次の学習への意欲が高まる。このような成就感、達成感を持たせるには、児童生徒の学力の実態、既習の経験を十分に把握し、具体的で到達可能な目標の設定や自己評価のさせ方を工夫して、個に即して理解の深まる授業の展開を図ることが必要である。

3)承認や賞賛のできる学級集団の雰囲気づくりをする。

学級全体が相互に認め合い、励まし合って、目標に向かって集中できる雰囲気の中でこそ、一人一人の学習意欲が高まる。相手の発言を本気になって聞いてやり、その中からよい点を認めほめてやろうとする思いやりのある学級集団づくりが望まれる。

(2) 学習の仕方を習得させる工夫

主体的な学習ができるようにするには、児童生徒に学習の手順や方法を、発達段階に即して身につけさせることが必要である。

1)学習の手順

どんな順序で学習すればよいかが分からなくては自ら進んで学習することはできない。教科の特質に応じて、学習の手順を明確にし、児童生徒に身につくように計画的に指導することが大切である。

例えば、理科の学習では、課題を設定し、予想を立て、観察や実験によって検証し、結論を導き出すまでの探究の過程が学習の手順であり、社会科の学習では、問題解決学習の基本過程がこれに当たり、児童生徒に身につけさせたいことである。

教科の特質によってこの手順は異なるので、発達段階に即して「学習の手引」を作成し、毎日の授業の中で活用しながら、無理なく、型にはめ込むことなく身につくように指導することが必要である。なお、指導に当たっては典型的な単元の展開の中で、学習の手順を学習させ、他の単元では、児童生徒自らがその手順により学習できるように、教師の適切な助言、援助が望まれる。

2)学習の方法・技術

児童生徒が主体的に学習するためには、学習内容への切り込み方、分析の仕方、操作の仕方、思考の仕方の習得が不可欠である。

例えば、社会科の歴史学習における「いつ、だれが、どこで、何を、なぜどのようにして」の追究方法、数学科の図形学習における様々な操作の仕方国語科の文学教材読解における重要語句や文章への着目などが教科の本質に即して指導すべき学習の方法である。

また、自ら学習をするために必要な

 

 

 


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