教育福島0132号(1988年(S63)07月)-033page

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き、あざやかな新緑の美しい自然、そして最も過ごしやすい気温の五月が大すきです。

私の家の近くに、かっこう鳥が二羽いるらしく、毎朝すばらしい音楽を聴かせてもらっています。「二羽いるらしく」と言うのは、まったくの素人判断ですが、鳴き方の特徴から、「非常に正しいリズ感をもつて鳴く先生かっこう鳥」と、一方「リズム音痴的な鳴き方をする生徒のかっこう鳥」がいるからです。

更に鳴き方の速度を、メトロノームで調べてみると、先生かっこう鳥は、およそ◆=72で、生徒かっこう鳥の方は◆=60程度です。

心なしか、先生かっこうの方は、鳴き声にはりがあり、聴いていて実にすばらしい音楽を演奏しているように聴こえます。しかし生徒のかっこう鳥の方は「つつかえ、つつかえ」歌っている感があります。

はっきりした期日は覚えていませんが、いつの間にか、先生かっこう鳥の鳴き声が聴かれなくなり、生徒のかっこう鳥だけが、毎朝、一生懸命に練習している日が続きました。

私は、ある朝^野暮用のため午前五時頃起き出して見ると、低く雨雲がたれこめ、小雨が降っていて、雀の声だけがいやに甲高い調子で聞こえて来る不快な気分の朝でした。

その朝は、どうしたわけか、例のリズム音痴のかっこう鳥が、鳴いてくれません。まだ目がさめないのだろうか、それとも、雨のための不快な朝のせいだろうか?……。

 

本校には、五月二十三日より、教育実習生が三名来て勉強中です。

我が校の音楽主任は新採用教員のため、私が二年生の音楽の授業を、教生諸君に提供することになり、題材名、「がっきでたのしく」より、「かっこう」を教材として授業をしました。

授業の中で、児童全員が、かっこうの鳴き声を聴き親しんでいるということを知り^関心の深さはそれぞれ異なるでしょうが、自然を肌で感じとり、自然に直接ふれることが出来る子どもたちをすばらしいと思いました。

その日の昼の校内放送で、「教頭先生が、私たち二年一組の音楽を教えてくれました。かっこうの曲を鍵盤ハーモニカで、吹けるようになりました。ほんとうに楽しかったです」という可愛らしい子どもの声と、かっこうのメロディーが流れました。

私は一どちらかというと、「きびしい音楽の指導」をしているほうなので、「楽しい音楽の授業をすることの大切さ」を、二年生の子どもたちに、教えられ反省させられました。

五月晴れのような、とてもさわやかな気持になり、ますます大好きな五月になりそうです。

(塙町立塙小学校教頭)

 

昔話に思うこと

小貫義史

 

ンデ!」という甲高い声に、それなりに準備などして身構えるようになった。

 

「コレヨンデ!」二歳になったばかりの娘が、最近よく口にする言葉である。これとは昔話のことで、お気に入りの話が二−三あるらしい。毎日飽きもせず、同じ絵本を持って来ては、読んでくれとせがむ。たぶん、多くの親がそうであった様に、子どもが生まれるまで、まったく忘れていた”昔話〃であった。近頃は、いつ襲って来るか知れない「コレヨンデ!」という甲高い声に、それなりに準備などして身構えるようになった。

昔話の楽しさは、いろいろ考えられる。途方もない夢が、かならず実現したり、冒険心を満足させたり、人間として大切なやさしさ・正直な心の重要さなど、無理なく子どもたちへ語りかける点にあると思う。特に、物語を構成する登場人物が、身近な動物であったり、自分と同じ小さな子どもであったりする場合は、子ども心をおおいに引き付ける。ひょっとすると、物語と現実の世界の区別がつかない程、魅了されてしまっているかも知れない。

ところで、この様な“昔話”が、語り継がれた背景は、一体何であったのだろう。子ども心をみごとにとらえる“昔話”その果たした役割にも、非常に興味を覚える。たとえば、多くの昔話に共通する“他人に対するやさしさ”人間であればだれしも、いや自分の欲望に忠実な人間であれば、自分だけが幸福になりたいと思うのが自然であり、人情である。しかし、登場人物の多くは、自分を捨て、他人のために精一杯尽すのである。普通の人間ではなかなか成し得ない行為ゆえに、私たちは、そこに素晴しい人間性を発見するのだろう。昔の人たちも、そこに苦しい現実を忘れ、楽しい未来を見ようとしたのかもしれない。次代を背負う子どもたちにとっては、夢をかなえてくれる世界であり、やさしさや正直な心を持つことの大切さを語りかけ、そして教えてくれる教師であったに違いない。同時に、つらい現実を生き抜く心の支えとして、非常に大切な教えであったのだと思う。

今、、子どもたちの心の豊かさを考える時に、家庭での教育力の低下が叫ばれて久しいっ科学技術の進展は、豊かな社会を築き上げ、物質的な豊かさは、多くの人々に、“心の安定”さえも与

 

 

 


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