教育福島0132号(1988年(S63)07月)-034page

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えたように感じさせる。しかし、一部の子どもたちに見られる問題行動に接するたび、”心の貧困さ〃を痛感せずにはいられない。親が子を思う気持ちには、時代的変化がないはずである。にもかかわらず、一部、家庭にみられる、教育力の低下、子どもの“心の貧困さ”は、一体何に起因するのだろう、本来、心のやすらぎと精神的安定を与える場であるはずの家庭から、多忙のあまり、夢を語ったり、理想に胸をときめかす機会が徐々に薄れていくように思えるのは気のせいだろうか。

(県立東白川農商高等学校教諭)

 

育てる

高橋京子

 

づくりを始めた。私同様、夫も洋ランについての知識はなかったように思う。

 

わが家の小さな温室に洋らんが仲間入りしてから、十数年になる。旅先の花屋で見かけたシンビジュームの地味でいながら、凛とした姿に魅せられたのがきっかけである。それまでは、名前さえ知らなかった花であるが、店員の「この花は長持ちしますよ。大事に育てれば来年も咲きますよ」ということばに、高価な花であったが生来の衝動買いの癖で前後を考えず買って帰った。「またかー」とあきれ顔の夫であったが、何を感じたものか参考書を手に洋ランづくりを始めた。私同様、夫も洋ランについての知識はなかったように思う。

同じ種類で、同じ手入れをしても、咲く時期が早くなったり遅れたり、大きく咲いたり小さかったりで、試行錯誤の連続であった。

ようやく、人に見てもらえる花を咲かせるようになっているが、それでも花の数が少なかったり、病気になったりで、気の抜けない花である。

現在、小さい温室には、シンビ、デンドロに加えて、ミニカトレア、パフィオなどが雑居している。

本当は種類の同じものの方が栽培は容易なのだろうが、親戚、知人が買い求めばしたが、次の年は花をっけず、処置に困り、持ち込むものも多い。

持ち込まれると、ことわりきれないらしく、病気や栽培法のちがいに困惑しながら、それらの一鉢一鉢と対話しながら、それらに適した育て方をみつけて育てている。もっとも、水やりと温度の管理や換気は、八十歳になる老父母がやってくれているだが。

さて、私の前には多くの子どもたちがいる。みなそれぞれに味わいのある美しい花を咲かせる花芽を持っていて時がくれば自然に、みな美しい花を咲かせるにちがいない。しかし、私はより大きく、美しく咲かせてやりたい。そのために、肥料を施し、水を与え、病気を予防し、害虫を駆除して、たくましい根をつくり、葉を繁らせてやらねばならない。

とはいえ、現実はきびしい。小さな温室に種類の異った鉢が雑居しているわが家の温室のように、狭い教室には、生活環境や能力・性格・考え方など、どれをとっても全くちがう多くの子どもたちがいる。誰がどんな能力をもちどんなことに興味をもっているのか、どんな教え方がよいのかなど、それぞれに考えていかねばならないのだが、非力な私にはむずかしい。

今年がだめなら来年をといえる花であれば、やり直しもできようが、日々を生きている子どもたちには、やり直しは許されない。それを思うと、責任の重さを感ずる。せめて、私にできることは、子どもたちを見守っていくことである。子どもは、生れながらに自己を成長させていく力をもっている。その力を信じて、一人一人の子どもたちに、「元気ですか」「何か困ったことはありませんか」と声をかけ励ましていきたい。

(小高町立小高中学校教諭)

 

募集

 

募集

福島県文化功労賞

<候補者の推せんを受付け>〈候補者の推せんを受付け〉

福島県では、県民文化水準の向上を目指して、文化活動の促進及び文化的遺産の保護活動などに取り組んでいますが、その一環として、昭和二十七年より、本県文化の向上に多年にわり、顕著な功績のあった個人を表彰することにしており、現在までに六十五名のかたが、それぞれの部門で受賞しています。

対象部門は 芸術(美術、音薬、演劇、舞踊、文芸、生活芸術等)、科学、(人文科学、自然科学)、教育(学校教育、社会体育)の四部門で、このいずれかから二名以内を受賞者として決定し、十一月三日の文化の日に表彰式を行います。

候補者を推せんしようとする個人又は団体は、必要書類を八月五日(当日消印有効)までに市町村教育委員会、又ば県教育委員会に提出して下さい。なお 必要書類等詳細については市町村教育委員会か県教育庁総務課行政係までお問い合せ下さい。

 

 

 


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