教育福島0132号(1988年(S63)07月)-051page
した。
集団を中心とした、具体的実践については、昨年の『教育福島』九月号に掲載しましたのでご参照下さい。
四、個を中心とした研究実践
個を中心とした自己教育力を育てる研究実践は、六十一年度に行った実践結果と自己評価の結果を分析して、
1) 十二評価要素の総計が、事前・事後ともに低い状態にある児童・生徒をA型
2) 十二評価要素の総計が、高い状態から低い状態に変化した児童・生徒をB型
3)十二評価要素の総計が低い状態から高い状態に変化した(伸びた)児童・生徒をC型
と三つのタイプに類型化しました。
個への指導は、この中のA型とB型の児童・生徒を抽出して実践を行いました。一年次における研究実践の中で講じてきた自己教育力を高めるための手だては、多くの児童・生徒に有効であったと思われたものでも、A型、B型の児童一生徒にとっては、マイナスの作用をしたり、全く効果をあげていないことがわかりました。
このことから、実践した追究の手だてが受け入れられなかった何かの原因があったのではないかと考え、更に児童・生徒の性格要因と環境要因を分析することから、より効果的な手法を探ろうとしました。具体的には、性格要因を明らかにするため、標準化された検査を利用することにし、基本的な検査としてYG性格検査を用いました。
また、YG性格検査の結果、特に、不安傾向の強い児童・生徒には、不安傾向診断検査(GAT)、不適応傾向が強く環境要因にも問題があると思われる児童・生徒には、問題性予測検査
(DAT)を実施し、伸びが見られなかった要因の把握に努めました。、
C型の児童・生徒の分析は、集団を中心とした研究実践の中で大きな成果がみられた児童・生徒を対象に行ったものであり、分析した結果から、自己教育力を育成するための有効な手法や手だてはどのようなものであったのかを探ろうとしました。
C型(伸びた)児童・生徒の分析結果から、
1) 自己教育力の高まりは知能偏差値や学力の高さとは必ずしも一致しない。
2) 性格検査による類型と高く伸びた児童・生徒との間に、直接の関連を見つけることはできなかったが情緒的な不安定は必ずしもマイナス要因とはなっていない。
3) 環境的要因の中では、特に人間関係に配慮することが大切である。などの追究の手だてに関する視点を得ることができました。
五、研究実践のまとめ
二か年にわたり行いました研究の成果をまとめますと、集団を中心とした研究実践では、各集団ごとに陥没要素を把握し、それをもとに補完・強化のための指導を加えたところ大きな成果が見られました。一中間報告書参照)
個々の児童・生徒の育成については評定尺度による調査とともにYG性格検査や環境などの条件を考慮して実践したところ、次のような指導が有効でした。
1) 不安傾向の強い児童・生徒には、それぞれの長所を認め賞賛するなど、温かい雰囲気の中で自信を持たせる指導。
2) 情緒的には安定しているが意欲に欠ける児童・生徒には、責任を持たせ、さまざまな揺さぶりを与えながら、それを成し遂げさせるなど、成就感を味わわせる指導。
3) 内向的で感情をあまり外に出さない児童・生徒には、発表の機会を多く与え、自己を表現させ、自信を持たせる指導。
実際の指導に当たっては、教師側から児童・生徒が互いに意見交換ができるような雰囲気を作ってやるなどの手だてが大切であり、温かい雰囲気の中で、級友を信じ、学習に励むなど児童・生徒の学習や反応が交互に繰り返されることによって、自己教育力が育成されるものと考えられます。
また、自己教育力は、自他を意識して向上するものであり、学級集団や班別活動など集団とのかかわりの中で、育成されるべきものとも考えられます。
六、おわりに
研究実践にあたっては、事前、事後の調査結果を当センターの汎用コンピュータで処理し、集団、個人ごとのダイヤグラム表示を工夫するなどコンピュータの機能をフルに駆使して行いました。研究実践の詳しい状況については、県教委刊「本研究報告書」及び県教育資料研究会刊「研究資料集 第十一集」をご覧下さい。
表2 自己評価票〈評定尺度2)〉 (小学校用の一部)