教育福島0133号(1988年(S63)09月)-008page

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特集1

 

道徳教育の推進

自己を見つめ、高める指導

義務教育課

 

〈はじめに〉

 

昨年十二月二十四日に、教育課程審議会は「幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善について」の答申を行った。

答申では、現在の社会の状況を次のように分析している。

「今日の科学技術の進歩と経済の発展は、物質的な豊かさを生むとともに情報化、国際化、価値の多様化、核家族化、高齢化など、社会の各方画に大きな変化をもたらすに至った。しかもこれらの変化は、今後ますます拡大し、加速化することが予想される。これらの諸変化は、幼児児童生徒の生活や意識に深い影響を及ぼしている。(以下略)」

この教育課程審議会の答申の指摘のとおり、近年の急激な社会の変化は、児童生徒の意識や行動に深い影響を及ぼしている。特に、いじめ、登校拒否、規範意識の低下、自殺等の児童生徒の問題行動の原因や背景には、生命尊重の態度や他人に対する思いやりの心の欠如、基本的な生活習慣が十分身についていないなど、児童生徒の心の中に道徳性が育っていないことがあげられる。

これらの児童生徒の問題行動を根底から解決するためにも、また、二十一世紀を志向した教育課程審議会の「豊かな心をもち、たくましく生きる人間の育成を図ること」をはじめとする、四つの教育課程の基準の改善のねらいを達成するためにも、今後の道徳教育の在り方について、一層の充実と改善に努めることが大切である。

 

一、道徳教育にみられる問題点

 

本県における道徳教育は、各学校における研究的な実践の積み重ねにより、年々その重要性が認識され、より質の高い道徳教育が展開されてきている。

しかし、問題点がないわけではない。まず、各学校における道徳教育の現状を、次の観点から見直し、各学校の問題点を明らかにすることが、今後の道徳教育充実の出発点となる。

 

〈見直しの観点〉

○ 学校における道徳教育が、自校の教育目標具現の方向に添い、学校における全教育活動を通じて行われているか。

○ 道徳の時間の指導では、各教科及び特別活動における道徳教育と密接な関連を保ちへこれを補充、深化、統合し、道徳的実践力を育成しているか。

○ 道徳教育を展開するに当たっては、教師と児童生徒及び’児童生徒相互の人間関係を深め、日常生活の基本的行動様式をはじめとする遺徳的実践の指導を徹底しているか。

以上提示した見直しの観点から県内の道徳教育をみた場合、次のような問題点がみられる。

 

1、道徳教育に対する理解や関心及び計画や実践についての較差がみられる。

・ 道徳教育の在り方や道徳教育の目標についての共通理解の不足

・ 道徳教育の全体計画や年間指導計画の活用や改善への努力不足

2、指導のねらいが明確化、具体化されないままの授業がみられる。

・ 地域、学校、児童生徒の実態に応じた重点的指導の弱さ

・ 多様な指導過程や指導法の開発の不足

・ 資料分析の甘さや読み物資料への偏り

・ 資料の収集と活用を図るための保管の工夫不足

3、道徳教育が道徳の時間の指導にだけまかされ、教料、特別活動等における道徳的実践の指導に弱さがみられる。

・ 道徳的実践についての認識不足

・ 各教料、特別活動等における道徳教育の役割についての認識の不明確さ

・ 社会環境の変化と学校における道徳教育の対応のずれ

 

これらの問題点は、県内における一般的な傾向であり、各学校すべてに当

 

 

 


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