教育福島0133号(1988年(S63)09月)-011page
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評価し勇気づけること、また、一人一人の児童生徒の道徳性と全児童生徒に見られる道徳性との傾向とが、道徳教育の重点目標や指導内容に照らして、どれほど変容し、成長したかを明らかにするよう努めることは大切なことである。そのために、道徳性の検査や日常の観察、作文など、より多様な評価方法の工夫が必要である。しかし、短時間や短期間での変容の評価には十分留意し、常に広い視野に立って、長い目で見つめていくように努めなければならない。
四、家庭及び地域社会との連携
児童生徒は毎日、それぞれの学校と家庭で生活している。学校と家庭とでは、本来その教育機能を異にする。しかし、道徳教育においては、学校で学び、育成された道徳的実践力の具体的な実践の場として、家庭や地域が果たす役割は大きい。
教育課程審議会の最終答申においても、道徳教育における学校と家庭、地域社会との連携の重要性について
「学校において道徳教育を進めるに際しては、豊かな体験を通して児童生徒の内面に根ざした道徳性を育てるように配慮し、それが日常生活における道徳的実践に生かされるよう指導の充実を図る。その際、学校は、家庭や地域社会と密接な連携を図って、指導の効果を一層高めるよう配慮する」と提言している。
今日、地域社会の教育機能の衰退、家庭の教育力の低下が大きく問題視されている。各学校においては、学校と家庭、地域社会との連携を積極的に推進し、学校における道徳教育の効果を高めるとともに家庭や地域社会の教育機能の活性化を促し、家庭や地域社会の教育力の回復、強化・充実を図る努力が望まれる。
連携を図る取り組みとして、次のようなことがあげられるが、更に、学校や地域の実態に応じて創意工夫をすることが必要である。
ア、家庭との連携
道徳の授業公開、道徳のしおりの発刊、学校だより、学年通信(学級だより)等の発行、交信ノート、親子奉仕活動、保護者懇談会、親子レクリェーション等。
イ、地域社会との連携
学校との連携組織の設置、地域ぐるみのあいさつ運動、クリーン運動への参加、地区懇談会、道徳教育講演会等。
〈おわりに〉
教育課程審議会の「豊かな心をもち、たくましく生きる人間の育成を図ること」をはじめとする教育課程の基準の改善のねらいを達成するため、道徳教育は重要な役割を果たしていかなければならない。
今後は、「人間を尊重する精神や生命に対する畏敬の念を培うことを基盤として、民主的で文化的な国家・社会の発展に努め、進んで平和的な国際社会に貢献できる、主体性のある日本人を育成すること」(教育課程審議会答申)をめざして、道徳教育の一層の充実を図っていかなければならない。
そのため「豊かな体験」を通して育成された道徳観が、日常生活における道徳的実践にまで高まるような、継続的な指導を展開していく必要がある。
次に紹介する二本松市立二本松南小学校と白河市立東北中学校は、ともに文部省の指定を受け意欲的に研究を推進している学校である。
二本松南小学校は、「学校と家庭の連携」による道徳教育の推進を、東北中学校は「白河四小、小田川小との協同」による道徳教育の推進をテーマに研究に取り組んでいる。いずれの研究実践も、道徳教育の今日的な問題や今後の課題を真剣に受けとめているすぐれた実践例である。
二校の実践例を参考として、各学校においても、日常の道徳教育の一層の充実を図るよう望んでいる。
ひろい心をもち、自ら進んで実践できる子どもの育成をめざす道徳教育
−単校と家庭及び地域社会の連携・協力を深めるなかで−
二本松市立二本松南小学校
一、主題設定の理由
教育の目的は人格の完成にあり、人格の完成に最も大きく関わるのは心の耕しである。本校教育の目標をまた、思いやりの心を耕し育てることにある。
ことに二十一世紀に生きようとする児童にとっては、人種・民族を越え異文化に対しても広い視野からこれをみつめ、深い理解ができなくてはならない。また、普遍妥当な価値に照らして行為を正しく選択し、他と共に生き、しかも自己実現を図るひろい心とたくましい実践力がなくてはならない。
こうした児童を地域の教育力の高まりの中で育成することが今日的な課題であると受けとめ、この主題を設定した。
二、研究の基本的な考え
児童一人一人が、自己をみつめ、より高い価値を追求、自覚する中で道徳的判断カ、道徳的心情を養い、学校と家庭及び地域社会の連携・協力を深める中で道徳的実践に結び付ければ、ひろい心をもち、自ら実践できる子供に育成することができるであろう。
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