教育福島0133号(1988年(S63)09月)-049page

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教育ひと口メモ

新教育課程

理解のためのキーワード

−高等学校教育課−

 

昭和六十二年十二月二十四日付で教育課程審議会が答申を出しました。

この答申をうけ、来春に告示予定の新学習指導要領の改訂の焦点について、いくつかのキーワードを取り上げました。先生方一人一人が意欲的に研修を深める資料としてご活用いただきたいと思います。

 

一、豊かな心

答申の基準改善のねらいの一つとして、「豊かな心をもち、たくましく生きる人間の育成を図ること」が掲げられている。

豊かな心とはゆとりのある心で、自分の欲望などに対するトレランス(耐性)を身に付けることである。即ち、自分の在り方生き方を主体的に決定し、それに向かって懸命に努力する意欲をもつことにほかならない。具体的には、真理を求める心、自然を愛する心、美しいものや崇高なものに感動する心、生命を尊重する心、他人を思いやる心、感謝の心や公共のために尽くす心等を育てることがあげちれる。

 

二、たくましく生きる人間

人間がたくましく生きるには、心身ともに健康である必要がある。健全な精神が健全な身体をつくるといわれるように、身体の健全な成長発達を妨げる要因をあらかじめ取り除く必要がある。そのうえで精神面での諸能力を知的な訓練によって、一層高め、社会の変化に対応できる人間を育てることが要請されている。その具体的なものとして、基本的な生活習慣を身に付け、自らの意志で社会規範を守る態度を育てること、自立・自制の心や強靱な意志と実践力を育てること等があげられる。

 

三、自ら学ぶ意欲

中央教育審議会報告(昭和五十八年)で自己教育力とは「主体的に学ぶ意志、態度、能力など」であると述べている。「自ら学ぶ意欲」は自己教育力の中心となるものである。それは、、生徒一人一人が主体的な学習の仕方を身に付け、自らの学習の場で学習課題や方法を自己決定する能力を習得することである。そのためには、一生徒に活動や学習への適切な動機を与え、学ぶことの楽しさや成し遂げる喜びを体得させ、存在感をもたせること等があげられる。

 

四、社会の変化への主体的な対応

社会の変化に対応できる能力は、論理的な思考力、現状分析と確かな見通しに立った判断力、表現力等の育成をとおして高められる。具体的には、思考力と想像力、直観力等を重視し、情報化の進展に対応する「情報活用能力」の育成を図る必要がある。

 

五、個性を生かす教育

臨時教育審議会は、個性尊重の原則を打ち出した。それを受け、答申では、個性を生かす教育の充実をあげている。

個性の尊重を教育目的にかかわる原理としてとらえるとき、生徒のもっている諸特性のうち、特に優れているものを見つけだし、それを伸ばしていく必要がある。そのためには選択の幅を一層拡大することが望まれる。

これかちの教育は、知識や技術を教える教育から、自ら考え、主体的に判断し、行動する能力を重視する教育へとその内容を転換する必要がある。

 

六、基礎的・基本的な内容

教育は文化や伝統を次代の新しい人々に確実に伝える機能をもつ。教育によって次代の人々が共通に社会の一員として生活するために習得すべきものが基礎的・基本的内容といえる。そのことを踏まえることによって個性を生かす教育ははじめて可能となる。

 

七、国際理解、文化や伝統の尊重

臨教審の教育改革の基本的な考え方の一つに「国際化への対応」をあげている。「答申」においては、「国際理解を深め、我が国の文化と伝統を尊重する態度の育成を重視すること」と国際理解教育の推進の重要性を説いている。具体的には、諸外国の人々の生活や文化を理解し、尊重するとともに、我が国の文化と伝統を大切にする態度の育成を図り、今後、国際社会に生きる日本人としての自覚と責任感をかん養する必要がある。

 

八、社会科の再編成

世界史、日本史、地理のグループと現代社会、倫理、政治、経済のグループに二分し、地歴科及び公民科の二つの教科に再編成した。特に新しい時代の要請として、世界史及び他の一科目を必修とし、公民科では、現代社会または倫理及び政治経済のうちどちらか一つを選択するものとした。

 

九、家庭科の履修

「家庭科一般」、「生活技術」、「生活一般」の科白を設け、これらのうち一科目をすべての生徒に選択履修させるものとした。

 

 

 


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