教育福島0133号(1988年(S63)09月)-052page

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養護教育センター通信

医療との連携による

心身障害児の教育相談

 

障害をのりこえ社会参加をめざそう

 

一、はじめに

一九八一年(昭和五十六年)は、“完全参加と平等”を掲げた国際障害者年の第一年でした。このテーマの“平等”な教育とは、憲法や教育基本法で示されている「能力に応じて、ひとしい教育」、つまり健常者のニーズを充たすのと同じ適切さで、障害者の個々の教育的ニーズを充たす教育を実現することであるといわれています。

ところで近年、出生率の低下の一方で、養護教育が対象とする心身障害児の、障害の重度化、重複化が進行しています。

こうした状況下での障害児に対する「平等」の教育の実現には、教育サイドの整備・充実だけでは不十分であり医療及び福祉機関とが一体化した、いわゆる総合的な機能連携による対処が必要となります。

 

二、教育相談における医療の役割

養護教育センターは、心身に障害のある就学前幼児、学齢児童生徒に関する教育相談機関として、障害の種類や程度に応じた適切な教育措置がとられるよう、専門的かつ総合的観点から、次のような相談等を行っています。

1、相談活動を通して、悩みや不安の解消を図り、子どもとその関係者の生活創造への援助を行う。

2、相談活動に当たっては、必要に応じて専門機関との連携を密接にし、心身障害児教育の内容の充実を図る、

3、適切な就学指導が推進できるよう側面的援助を行う。

教育相談をこのような形で進めるためには、主訴がどのようなものであれ相談対象児をどうしたら伸ばしてやれるかを、保護者をはじめ担任の先生や必要があれば関係の医師などが知恵を出し合って、その方向を探ることから開始しなければなりません。つまり、医師との連携は、身体医学的、精神医学的視点から、どんな時に、どういうことができ、どういう状況ではどんなことに注意したらよいかなどを明らかにしながら、指導のための具体的方法を見い出す時点で欠くことができない要件となるのです。

相談対象児をみる視点には、生物的、心理的、社会的側面がありますが医師が関与するのは、主として生物的な面ということになります。そして身体的な障害等についての正確な診断と、その障害の程度とそれを治していく医学的な方針として打ち出されたものを教育サイドに伝達することになります。

当養護教育センターでは、相談対象児の正しい姿をとらえ、どう指導すれば伸ばしてやれるかという視点に立った医療との連携を、このように進められるべきものととらえています。このことは、医師は指導のための具体的方法を考える際の参考意見を提供する立場にあることを意味するものであることはいうまでもありません。

医療との連携は、原則としてこうした考えを基盤にして進められることになります。なお、心身障害児のなかには、常時医療を必要とする者も少なくなく、こうした子どもたちを含めた連携の具体的姿を示すとすれば図1、図2のようになるでしょう。

心身障害児への教育的対応の目的は、「ある部分的機能や能力の障害や遅滞を治したり、より健常に導いたりすることを目指すのではなく、子どもごとの心身の全体的・総合的発達(人格発達)を可能な限り高めようとすること」です。とくに乳幼児や児童の段階においては、歩けるようになればいい、

 

図1 治療的接近(特定領域の治療・訓、練部分的・集中的・期間的)

図2 治療教育的接近(発達障害への教育−全体的・総合的・長期的)

 

図2 治療教育的接近(発達障害への教育−全体的・総合的・長期的)

 

 

 

 


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