教育福島0133号(1988年(S63)09月)-053page
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ということだけでは済まされないものといえます。(とかく親やそれぞれの専門家は、このところだけ目を向けがちであることは否めません)
心身障害児にとっては、心身の部分的能力の向上も含めて、一人の生活体・行動体(人間関係や社会的なかかわりの中で生きる人間)として、可能な限りの全体的・統合的な発達の課題をもっているといえます。もちろん、その可能な限りを実現するためには、たしかに多くの専門家が、有機的・共同的にかかわる必要があることはいうまでもありません。
このようなことを踏まえて、当養護教育センターでの教育相談では、表1のとおり嘱託医を委嘱し、医療面からの援助も取り込みながら進めています。
教育相談における嘱託医の執務回数は、昭和六十二年度の場合、表2のとおりでした。
医療とのかかわりにおける教育相談について、まず、障害別にみてみると精神薄弱と情緒障害が、それぞれ約三十パーセントと多くなっています。これは、実件数が多いうえに、脳の器質障害を伴うケースが多く、医学的な検査が必要な場合が多くなっているためといえます。
次に、診療科目別にみると、小児科、精神科が多くなっていますが、これは障害別件数との関係で、精神薄弱や情緒障害に対する小児神経学・神経精神学のかかわりが必要なためといえます。
医療面の協力を必要とする相談内容の概要は次のとおりです。
○ 就学前乳幼児の場合
子どもの様子がおかしい、発達が遅れているのではないか、と親自身が気づいて、あるいは保健所等の検診で指摘されて、それらの問題が、器質的な障害からくるのか、対応(養育)のまずさからくるのか、ということで医学的所見や対応(養育)の手だてを求めての相談が多くなります。
○ 就学時幼児の場合
就学先について、小学校の通常学級あるいは特殊学級が適切なのか、または盲・聾・養護学校がいいのか、その判断のため、子どもの現状について、医学的な診断、心理学的な諸検査等を求めての相談が多くなります。
○ 学齢期の児童生徒の場合
現在、就学している学校・学級での様子の変容、学習や発達の遅れ、適応の状況、さらには卒業をひかえての進路等について、医学的に見た子どもの現状や予後、教育上の適否や指導の手がかりを求めての相談になります。
このように、教育相談における教育学的・心理学的接近に対し、医学面からの援助が統合されて、教育相談機能がより一層充実したものになります。
三、おわりに
心身に障害をもたらす原因は、きわめて多く、しかもその発生時期もさまざまです。その結果、一人一人の状態像は多様となりますが、一人一人の障害の特性をとらえ、生物的・心理的・社会的に健康な状態に導く必要があることには変わりはありません。そこでの教育相談における医療との関係は、医療と教育のいずれかが優先するものではなく、それぞれが互いに支え合うような機能連携を基本として進めなければならないでしょう。
表1 昭和63年度養護教育センタ 嘱託医
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表2 昭和62年度来所相談における嘱託医の係り
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