教育福島0134号(1988年(S63)10月)-035page

民会館において第八回民謡まつりを開催する予定である。

　

埋蔵文化財の現況

　

一、重要遺跡基本資料整備事業

　

遺跡周知事業で確認された遺跡のなかから重要遺跡をとりあげ、保護のため基本的な資料を整備する。

本年度は、県中・県南地区を対象に、五十五遺跡の立地・発掘調査等の成果を示す航空写真や記録を収集し、整備することとしている。

　

二、指定文化財管理事業

　

一般には文化財パトロール事業と呼ばれ、二十一名の福島県文化財保護指導委員が五百五十か所を年二回巡視し、保存状況を確認している。

パトロール対象の文化財は、国・県指定の国宝・重要文化財及び重要遺跡等で、文化財の管理状況・環境保全の実態把握などに留意し、保存管理上問題があれば関係機関に連絡し、所有者や管理者に対し適切な指導助言をし、文化財保護に万全を期している。

　

三、発掘技術の研修

　

県教育委員会では、埋蔵文化財の発掘調査体制の強化と保護の徹底を図るため、調査員の専門的知識と技術の向上に努め、多種の研修への積極的な参加を呼びかけている。

本年度は奈良国立文化財研究所埋蔵文化財センター主催の次の研修会に参加を予定している。

一般課程一名、保存科学二名、遺跡環境課程・古墳時代遺跡調査課程・建築遺構調査課程各一名。

また、県教育委員会主催の第十六回福島県発掘技術者講習会は、福島市を会場に十五名の受講者があり、考古学に関する基本的な知識と技術について熱心に受講した。

　

四、開発に伴う発掘調査

　

埋蔵文化財は、土地利用と密接な関係をもち、その保存は容易なことではない。特に、最近は公共性の強い土地開発が急増し、保護と開発との調整にはかなりの苦労があり、早目に事前協議を行うことが急務である。

本年度県教育委員会で実施している分布調査は、相双地区の踏査および国営農地開発事業の母畑地区・矢吹地区、福島空港関連事業の試掘調査である。

遺跡は、現状のままで保存するのが最善であるが、種々の開発事業によって保存不可能な遺跡も少なくない。このような遺跡の全容を記録に保存するための発掘調査を、母畑地区・矢吹地区、会津農水事業、請戸川農水事業、東北横断自動車道、三春ダム、相馬地域開発、国道一一二号バイパス、真野ダム、福島空港関連などについて実施し、あわせて史跡指定調査関和久上町遺跡について実施を計画した。

また、市町村教育委員会においても分布調査、発掘調査を実施し、多くの成果を得た。それらの主なものは次のとおりである。

(一)　相馬地域開発地内遺跡

四月中旬より、相馬市・新地町にまたがる東地区内の遺跡を中心に発掘し記録保存を図った。昨年以来継続調査をしている大森A遺跡からは、六〜七世紀頃の水田が三層と、農耕具・人および動物の足跡などが出土している。水田は、一辺〜四メートルぐらいの大きさである。なお、その下層からは、二五〇〇〜三五〇〇年前の縄文時代の土器・石器なども発見されている。

(二)　三春ダム、柴原A遺跡(三春町)

三春ダムは、昭和六十八年度完成をめざして工事が進められ、本年度は水没地・道路等に関わる四遺跡について調査を進めている。

柴原A遺跡からは、縄文後期前半の配石遺構が多数明らかになった。その中には、前方後円形の敷石住居八基、集石墓、各配石をつなぐ列石、埋めがめなどが洪水による砂に厚く覆われ、当時の生活面をそのまま残している。配石群は、広場を中心に配されており縄文後期の社会・精神生活を考える上で貴重な遺跡である。

(三)　東北横断自働車道関連遺跡

本年度は郡山〜猪苗代間で二遺跡、猪苗代〜会津坂下間で六遺跡の調査が計画されている。

磐梯町の法正尻遺跡は縄文時代中期の集落遺跡で、住居跡二〇軒以上、土坑百数十基が検出されている。縄文土器・土偶、石器なども多量に出土し、縄文土器の中には北陸や関東地方の特色をもったものも混在しており、当時の文化交流を考える上で貴重である。本年度は四千平方メートルを精査し、次年度一万七千平方メートルの調査が予定されている。

河東町駒板新田横穴群では、現在までに約三〇基の横穴古墳が検出されている〇七世紀に築造された族長クラスの墓で、人骨・勾玉・ガラス小玉・鉄刀などが出土している。入口(羨道)部に河原石を積みあげているものが多く、ほぼ同じ時期にみられる横穴式石室をもった高塚古墳との関連を考える上で興味深いものがある。

(四)簑輪坂ノ前古墳群(浅川町)

国道一一八号浅川バイパス建設工事中に発見された古墳群である。路線内の五基の古墳が調査された。いずれも直径十五メートル前後の円墳で、割竹形木棺を直葬したものと、箱式石棺を埋葬主体としたものがある。木棺を直葬するグループは周溝内に埋葬している可能性が強く、構造上特異である。鉄刀・鉄斧・鉄鎌・鋤先・管玉などが出土した。六世紀中ごろの古墳である。