教育福島0134号(1988年(S63)10月)-041page
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値について認識を深め、全体の話合いでさらに深める。また、話合いを通しての最終的な自分の価値についての考えを書かせる。終末では、終末の資料を与えたり、説話等によって心を揺さぶり終わる。
2 検証の方法
1)アンケート、道徳生検査、観察により、価値についての認識や生徒の実態を把握する。
2)資料を分析し、話合いを通して練り、価値を内面化できる「一つの問い」をみつける。
3)導入、展開、終末の各生徒の意見をコールバーグの道徳性の発達段階を基準に分類し、変容をみる。
4)道徳授業についての生徒の自己評価をまとめ、楽しさの程度をみる。
3 検証授業「芝浜」(項目六)資料は酒好きでなまけ者の金さんが八十二両拾い、喜んで大さわぎして起きると夢だと聞かされ、心を入れ替えて働き者になったという落語「芝浜」を使った。金さんが金を拾ったところまでの資料を前渡しし、「八十二両を拾った後の金さんについて話を作ろう」という宿題を出すと、全員が自由に話を作ってきた。話を道徳生の発達段階で分けると、一年生二十七名中、二段階が四人、三段階が十八人、四段階が五人いた。導入では「もし二億円手に入ったらどうするか」というアンケート結果を見せた。「好きに使う。いろいろな物を買う。」など安易な生活を求めている者が多いことに気づいたようである。展開では、金さんが金を拾ったところまでの落語を聞き、OHPで話の各場面のマンガを見た。生徒の関心が高まったところ、小集団に分かれて話合いに入った。初めに、各自考えてきた話を発表し合い、その後、班として一つのまとまった話を作った。発表した中から一つ選んで肉付けしたり、何人かの話を合わせて話を作ったり、班で自由に話合っていた。小集団の話合いが終わるのを見計らって、全員を集め発表させた。太鼓の音楽を合図に各班の発表者は照れながらも気分をだして発表した。発表後には割れんばかりの拍手が送られた。全班が三、四段階の話を作った。小集団の話合いで、安易な生活のみを求めるようとする考え方が消えた。終末ではマンガを見ながら落語の続きを聞いた。最後に、「金さんの仕事に対する取り組みの変化から学んだこと」を書かせた。二段階の意見が六人、三段階の意見が八人、四段階の意見が十三人だった。
初め、二、三段階の話を作っていた生徒小集団の話合い・全体の話合い、終末の後には、半数が四段階の意見に変容している。小集団の話合いによって、低い段階の意見が、高い価値を含む級友の意見に刺激されて、みがき上げられたからである。授業を通して、道徳的実践力が育成できたと考えられる。
自己評価では、八十九パーセントの生徒が「楽しい」と評価している。また、日記には「道徳は金さんのことをやりました。とてもおもしろかった」等の感想があった。価値について身構えることなく、気軽に自分の意見を持ち、最後には心に響く授業が実践できた。生徒は、自分の価値観や考え方と,異なる種々の意見に触れることを楽しいととらえている。生徒主体の授業の楽しさを生徒自身が感じているのである。
五、今後の課題
人の意見を聞くのはいいが、自分の意見を述べることを嫌う傾向が、学年が進むにつれて現れ、話合いの妨げになっている。この傾向を克服し、小集団による話合いを生かした指導の展開にこれからも努めていきたい。
資料2コールバーグの道徳性の発達段階
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小集団での話合いの結果を発表する
資料3 生徒の変容
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