教育福島0134号(1988年(S63)10月)-042page

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教育センタ−から

 

基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究

−第1年次・実態調査から−

 

一、本研究の趣旨

教育活動の中軸である授業は、教師の教授活動と児童生徒の学習活動が教材を媒体として、互いに均衡を保ちながら有機的に作用し合って初めて生き生きと展開され、その効果を上げることができる。ところで、これまでの教育は、どちらかといえば知識偏重の傾向が強かったと言われている。そしてまた、この傾向から脱却するための多くの試みがなされていることも事実である。県内の公立小・中学校が設定している昭和六十一年度の研究主題によると、「意欲的」、「自ら学ぶ」、「自主的・主体的」、「個性的・個に応ずる」等の表現が特に多く見受けられる。このことは、教育の根底をなす児童生徒理解に立った指導の必要性を物語るものである。そこで、学習指導において児童生徒一人一人の個性に目を向けた教育をすることが重要と考える。

折しも昭和六十一年十月に、教育課程審議会は「教育課程の基準の改善に関する基本方向について一中間まとめ)」を発表している。「中間まとめ」では、二十一世紀に向かって、国際社会に生きる日本人を育成するという観点に立ち、「国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視し、個性を生かす教育の充実を図るとともに、自ら学ぶ意欲をもち社会の変化に主体的に対応できる、豊かな心をもちたくましく生きる人間の育成を図ることが特に重要であると考えた」としている。

これらの内容を踏まえ、本研究では学習指導の改善の視点から、個性重視の原則に立ち基礎的・基本的な内容を身につけさせる過程を通して、更にそれを基盤としながら一人一人の個性を生かし、伸ばす学習指導のあり方を追究することにした。

 

二、研究計画の概要

本研究は、昭和六十二年度から三年計画で行うものであり、年次ごとの研究内容は次の通りである。

第一年次

・主題に関する文献研究

・調査のための理論研究

・実態調査

第二年次

・研究理論の構築

・研究仮説の設定

・実践研究(小学校国語科・社会科、

中学校数学科における検証授業等)

第三年次

・実践研究(小学校音楽科

・図画工作科、中学校英語科における検証授業等)

・研究のまとめ

 

三、第一年次の研究

(1)研究の概要

第一年次は、「基礎・基本」と「個性」に関する文献研究とともに、調査のための理論研究を進めた。

その中で、「基礎・基本」の定着を図るために学習指導においては、「基礎的・基本的な内容」を獲得させることが重要であると考え、その内容を構成する要素として次の三つを考えた。

○知識・技能 ○関心・態度 ○ジェクタビリティ(注参照)

さらに、「個性」を児童生徒一人一人の「よさ」ととらえ、次の五つの構成要素からなるものと考えた。

○知識・技能 ○興味・関心 ○学習適性 ○意識・態度 ○意欲

そして、これらを観点として、調査票を作成し、教師対象の実態調査を実施した。

(2)実態調査

1)調査の趣旨

この研究の方向づけとするため、小・中・高等学校の先生方が、日ごろ学習活動において「基礎・基本」、「個性」をどのようにとらえ、どのように指導しているか等の現状について調査した。

2)調査対象及び人数

調査に当たっては、県内の小・中・高等学校を大・中・小の規模別に分類し、それぞれの五。パーセントを抽出して、それらの学校の校長、教頭、養護教諭、講師を除く全教諭を対象とした。その結果、小学校五百十四人、中学校二百七十六人、高等学校二百九十五人に調査をお願いした。なお、回収率は、八十四パーセントであった。

3)調査の方法

質問紙法によるアンケート方式を採

 

 

 


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