教育福島0134号(1988年(S63)10月)-049page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

教育福島0134号(1988年(S63)10月)-049page


博物館ノート

農業技術の発達と

農民の暮しを語る

紀年銘農具

総合展示近世「会津農書の世界」は、近世の村の歴史を農書や農具等を展示し解説しています。元禄時代(一六八八〜一七〇三)は、農書とよばれる農業技術書の出現や、千歯扱き(脱穀用具)や唐箕、万石(選別用具)等の農具の発明など、農業技術の発達した時代です。このころ会津地方では、貞享元年(一六八四)に幕内(会津若松市神指町)の肝煎佐瀬与次右衛門によって『会津農書』が著され、当時の農業技術の発達を知ることができます。特に、唐箕使用の記載は、わが国の唐箕使用の最も古い記録です。また、百点あまりの農具の解説もあり、近世における農具の使用状況がわかります。

天保三年銘万石・金

天保三年銘万石・金山町

農書や文書に記された農具の歴史を、具体的な「もの」で裏づけるものに、製作年号や購入者・代金などを記した紀年銘農具があります。近年、紀年銘農具の調査が行われ、千歯扱きや唐箕、万石などの使用年代に関する成果があります。以下には、本館に収蔵・展示している主な紀年銘農具を紹介します。千歯扱きでは、南郷村の天保七年(一八三六)銘のものがあり、これまでの調査では最も古いものです。文献ではそれ以前のものが多々ありますが、会津地方における千歯扱きの使用年代を確定する資料です。唐箕は、京都府に明和四年(一七六七)銘のものが現存しますが、次いで田島町の文化五年(一八○八)銘のものがあります。これは東日本で最も古いものです。なお会津地方には、選別された穀物の出る樋がなく、唐箕の真下に落ちる「半唐箕」があります。米沢市に天保八年(一八三七)の湯川村北田で製造したものがあります。また、舘岩村の天保五年(一八三四)銘の唐箕は、丹波国の僧が作ったという墨書があり、山箕の伝播を「うかがわせる資料もあります。万石では、金山町の天保三年(一八三二)銘のものがあります。これには「万石師叶屋常吉」なる焼印もあり、専業職人の存在がわかります。これらの紀年銘農具は、農書や文書など史料にあらわれた農具の歴史を「もの」で確定する客観的資料として貴重な文化財であると言えます。

文化五年銘唐箕一田

文化五年銘唐箕一田島町

企画展「東国のはにわ」開催中

10月8日〜12月11日

常設展無料開放日

■月3日文化の日(企画展は有料です)


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。