教育福島0135号(1988年(S63)11月)-027page
が、二学期半ばで、人間関係の重圧に耐えきれず退職した。その方の優れた資質を惜しむとともに、心の内面の複雑さを思わずにはいられなかった。
人を育てる道を選んだ私は、何事にも優れ、意志が強く、努力を惜しまない立派な方々を尊敬し、憧れつつも、揺れ動くデリケートな心の持主をも大切にしたい。痛みを知る者は、人の痛みがわかる。そしてよき指導者にもなれると信じて、いつも弱い者の味方でありたいと思う。
やがて二学期も終わる。新しい年に向かって、がんばっている新任者の方々が、よき理解者に巡り会い、輝くような教師になれることを願っている(
(いわき市立湯本第三幼稚園 教諭)
やればできる
今野 隆
私が、いわき市立平第一中学校で教鞭を執るようになり、半年が過ぎた。今年の三月までは教えられる立場であった私が、四月からは教える立場になり、この立場の変化の大きさ・重大さを感じ、身のひきしまる思いをした。
いざ新学期が始まってみると、降りかかってくる全てが私にとって初体験のことで、戸惑うことが多かった。
新任教師として初めての入学式、第一学年三組の担任。保護者との懇談会。本当に新入生同様、期待と不安の入り混じったスタートだった。時間が経つにつれ、責任の重大さがじわじわと身に浸みて感じられ、やらねばという意欲に燃えてきた。
毎日の学級指導、授業の教材研究、部活動へと自分をぶっつけ、無我夢中で生徒たちにも接してきた。「これでいいのか」という自問自答が胸の中で繰り返される連日であった。が、多忙な毎日の中から、ささやかではあるが、何か自分なりに、仕事に対しての指針めいたものを感じ得るようになった。学級のことでも、部活動のことでも、とにかく「自分が先頭に立って実践してみよう。そうすれば、生徒たちも自分でやる気を出してがんばってくれる」と、信じて今日まで努力してきた。
この半年間で、私が一番感動し、また今後の励みになったことは、九月中旬に行われた体育祭での経験である。担任している一年三組は日常の学習活動が消極的であると言われてきた。事実、中間・期末テストの学習成績は他の学級に比べ、振わなかった。担任としては何とかしたい。意欲を持たせたい、またそのきっかけが欲しい。こんな悩みを抱いていたその矢先であった
夏休みが過ぎ、生徒の間で体育祭が話題になっているのを一つのきっかけに「強いチーム編成をしよう」という問いかけをしてみた。学級の話し合いは意外にも活気がみられ、かすかな期待を持つことができた。体育祭が行われ、その結果はクラス対抗リレー男女共一位、団体競技二位、個人競技の上位入賞などにより、なんと男女総合一位、女子総合一位、男女総合一位と、学年での優勝を果たすことができた。
結果もさる事ながら、生活態度に落ち着きがなく学習意欲に欠け、集団からはみ出しがちのS男がリレーの選手として走り、優勝に導いたこと。いつも静かで目だたないM男がゴールを目指し百メートルを走っている姿、そのいずれにも学級全員で精一杯の声援を送った。いつもばらばらに見える学級が一丸となって参加した結果が優勝で「やればできる」そう言い続けてきた私の願いが実現できたのである。また優勝は生徒たちにとって最大の喜びであり、無言の激励となった。
本当にこの半年問いろいろなことがあった。過ぎてしまえば短かく感じられものである。生徒一人一人の個性を認め、伸ばしてやることの重要さがこの半年の生活を通してよくわかった。今後の学級経営にこの体験を生かしていきたいと思っている。
(いわき市立平第一中学校教諭)
教育とは愛
高橋米子
『次代を創る子どもの広い心とたくましい体を育てるPTA活動』と題した当地方PTA研究大会に参加した。その中で、三人の子どもを育てている母親から「健全な子どもを育てるにはしっかりした家庭を築くことである。父の愛、母の愛が子どもに伝わった時、子どもは健全に育っていく」など、ご自分の実践を通した自信ある発表があって感動した。
顧みて、わが家の家庭教育はどうだったのかと悩んでしまった。私は共働きをしており、仕事に追われてわが子の三人のしつけは、とかく、同居している両親に任せがちである。両親が子どもたちと生活を共にしながら、熱