教育福島0136号(1989年(H01)01月)-013page

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(2) 「漢字辞典作りチェック表」

事前テストで誤答だった漢字、および新出漢字について調べ、「漢字辞典」を作っていくが、調べ終わった漢字の欄に色をぬっていくようにする。

(資料6参照)

(3) 授業における漢字指導

実態調査によって明らかになった誤答の原因、および習得上の問題点から考えた対策に基づいて次のような指導を行った。(指導案省略)

1) 誤りやすい字形に気づかせ、正確に理解させる指導

2) 類似した字形の違いに気づき、正しい漢字を選択させる指導

3) 同じ音の漢字を適切に使い分けさせる指導

4) 字義を理解させ、語いを広げさせる指導

5) 音読みの見当をっけさせる指導

 

資料6 漢字辞典作りチェック表

※ ●印は「漢字辞典作り」をする漢字(事前テストで誤答だった漢字)

※ ●印は「漢字辞典作り」をする漢字(事前テストで誤答だった漢字)

 

授業における漢字指導

授業における漢字指導

 

五、変容 (資料省略)

 

児童の意識調査を行った結果、漢字を書くことが「すき」と答えている児童が実践後には増えている。漢字を書くことが「きらい」と答えている児童でも、漢字を書くことは「だいじ」であり、もっと漢字を書けるように「なりたい」と答えている児童は多い。

漢字を書く力については、約半数の児童が「ついてきた」と答えている。その理由について、「漢字辞典作りをしたから」と答えている児童がほとんどである。

事前テストで正答率の低かった漢字三十三字について事後テストを行った結果、すべて漢字において事後テストの方が正答率が上回っている。しかし、事後テストの正答率、有効度指数ともに配当の学年が進むにつれて低くなっている。また、事前テストで正答率の低かった漢字ほど、有効度指数も低くなる傾向がある。誤答傾向についても、事前テストのときとほぼ同じ傾向が見られた。

 

六、研究のまとめと今後の課題

 

(一) 実践から

1) 「漢字辞典作り」

当初、学習活動が困難な様子の児童もいたが、要領を得るにしたがい、スムーズに作業を進められるようになった。

学習項目として、事前テストの結果を考慮しながら「読み」「字形」

「意味」の観点から取り上げたが、このようにさまざまな角度から漢字を学習させることは、習得させる上で大切なことである。

また、自己学習力が身につきつつあると同時に、国語辞典や漢字・漢和辞典の引き方に慣れてきたことは大きな収穫であった。

2) 授業における漢字指導

授業を工夫することによって、児童の漢字学習に対する興味・関心が高まった。授業においても「読み」「字形」「意味」が一体となった指導を積み重ねていくことが、児童の漢字を書く力の向上につながるものと思われる。

(二) 今後の課題

本研究は、児童が主体的に学習を進める「漢字辞典作り」と教師による授業における漢字指導を中心に実践してきたが、算出された有効度指数などを見ると、漢字の習得について十分満足できる結果が得られたことは言えない。今後も継続して指導していくとともに、次のような点について考慮していく必要がある。

1) 新出漢字が出てきたときの児童への出合わせ方が大切である。漢字の「読み」「字形」「意味」の観点から十分に指導する必要がある。

2) 教室環境等の配慮も大切である。学習したことが復習できるよう、それらの資料が児童の目に触れるように掲示するなどの配慮が必要である。

3) 漢字の習得は、その児童の生活態度ともかかわっているように思われる。「ねばり強く取り組む児童」「探究心が強く、進んで調べようとする児童」「読書の好きな児童」などは、漢字の学習においても成果を上げている。

このことから、指導法を工夫するばかりでなく、学級づくりを通して、児童自身が漢字を進んで学習しようとする雰囲気づくりをしていく必要がある。

 

 

 


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