教育福島0136号(1989年(H01)01月)-017page
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ウ 社会的思考・判断(…考えることができる)
エ 社会的事象に対する関心・態度(…大切にしようとする)
(七) 実践例
日本の歴史−日本の国の成り立ち−
これからの歴史学習への意欲を高める上でも大切な単元である。
そこで、子どもたちにとって身近な地域に視点をあて、今から約五千年前には「福浦にも人が住み、生活を始めていたこと」「当時の地形は、現在とは大きく異なり、人々は自然をうまく利用して生活していたこと」などを取り上げることにより、歴史への興味・関心を高め、主体的な追究へと結びつけた。実際の学習では「狩りや漁のくらし」を二時間扱いとし、地域素材を教材化して指導をした。
◎主体的に追究する子どもの姿
1) 問題を自分のものとしてつかむ段階
本時では、干拓前の井田川地区(青い線で囲む一と宮田貝塚一赤いシールをはる)の位置を示した地図を準備した。子どもたちは、地図の読み取りを通して「学校、自分の家、山、川」などには気づいたが、「青い線で囲まれた部分」「赤い点」については子どもたちの既有の知識では解決できないもので問題意識を持った。その結果、友だちとの話し合いを通して焦点化し、学習課題を自分のものとして設定していく姿が見られた。
2) 問題を追究する段階
子どもたちが持った問題意識の中で、「青い線で囲まれているところ」は、井田川浦の干拓(昭和初期に完成)であり、これについては、祖父母などから話を聞いたり、干拓に力を注いだ先人の銅像などから、知っている子が何人かいた。そこで、井田川浦の干拓や人々の生活について自分なりに調べ解決していく中で、赤い点(宮田貝塚を示す)について、ますます強い問題意識を持っていく子どもたちの姿が多く見られた。
3) 問題をつきとめ、新たな問題をとらえる段階
子どもたちは、家庭学習の中で資料を集めるなどして、赤いシールの所が何であるかを自分なりに調べてきた。そこで、それを確かめる資料として
(「おらほうの歴史」−大字史かみうら−より引用)を活用させ、赤いシールの所は、宮田貝塚と呼ばれる古代の人々の生活の跡だということを気づかせていった。さらに当時の生活を捉える上で、五千年前の海岸線を「おらほうの歴史」から読み取ったことをもとに地図上に記入させた。子どもたちは、驚きとともに当時の人々の生活をより具体的に知ることができた。その中で、郷土に対する新たな興味、関心が高まっていった。さらに当時の人々の生活について、もっとくわしく知りたいという姿が見られた。
◎自己評価から
子どもたちの「学習・行動・態度」などを子どもの自己評価を通して捉えてみた。主なもの(評価段階で4以上のもの)では、「自分の考えを持つことができましたか。」の評価段階を見ると、一時間目では六十五パーセント、二時間目では五十三パーセントの子どもたちが、自分の考えを持って学習に臨んでいた結果がでた。また、追究の要因にもなる「調べる方法がわかりましたか。」の評価では、一時間目が五十七パーセント、二時間目が六十九パーセントの子どもたちが、調べる方法がわかり学習に取り組んでいた結果がでた。「協力」に関しては、一時間日、二時間目とも七十三パーセントの子どもたちが、助け合いながら学習を進めていた結果がでた。以上のことから追究のある学習の場が設定されたと考えられる。「学習が楽しかったか」の評価では、一時間目が八十パーセント、二時間目が七十六パーセントの子どもたちが、楽しく学習に取り組んでいた結果がでた。このことが、社会好きの子どもを育成していくきっかけとなり、自らが追究する学習の楽しさを感じとり、これからの学習に大きくかかわっていくと考えられる。
◎追究の発展として
「狩りや漁のくらし」の発展として、当時の人々の生活や苦労などを知る上で「石おの作り」、「たて穴式住居作り」などの体験的活動を取り入れた。これらの活動により、子どもたちの主体的な追究意欲はさらに深まっていき歴史学習への興味・関心が高まったと考えられる。
五、研究の成果と今後の課題
(一) 研究の成果
1) 教師の学習課題の提示にかたよるよるだけでなく、子どもたちが自分で課題を作り上げていくような場の設定を工夫するようになった。
2) 課題の作り方や問題を解決するための手段がわかり、主体的に活動ずる子どもたちが多くなった。
3) 自己評価の工夫により、子どもの内面が捉えやすくなった。
4) 子どもたちの主体的な追究力を高めるための「学習過程」「グループ学習」などを授業を通して具体的に実践することができた。(二) 今後の課題
1) 子どもたちの追究意欲を高め、学習のねらいを達成するための中心資料の精選が必要である。
2) 興味・関心別選択学習を取り入れたりしながら、より主体的な追究学習の工夫に努めなければならない。
3) 各単元の指導計画、展開案の中での達成目標の具現化が必要である。
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