教育福島0136号(1989年(H01)01月)-034page

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特集 2

 

養護学校教育義務制施行10周年記念事業

教職員研究論文応募・最優秀賞論文の紹介

指導の工夫と喜びが59点の応募作に

養護教育課

 

昭和五十四年度に養護学校教育義務制が施行されて以来、十年目を迎えた。その記念事業として、盲・聾・養護学校及び小・中学校特殊学級の児童生徒学習作品の募集・展示・表彰と教職員の研究論文の募集・表彰を行った。

教職員の研究論文については、盲・聾・養護学校及び小・中学校特殊学級の担当教員より五十九点の応募があった。審査の結果、最優秀賞一点、優秀賞三点が決まり、十一月一日に県教育長より表彰状が授与された。

以下に掲載する論文は、養護学校に在学する自閉症児の言語的コミュニケーションの指導という困難な課題に取り組み改善を図り、顕著な効果をあげ、その独創的な指導方法について審査員の高い評価を受け最優秀に輝いた論文である。

現在小・中学校の特殊学級や養護学校に在籍する自閉症児の指導について示唆に富む実践研究である。

 

自閉児のコミュニケーション能力を高めるための指導

−反響言語の改善を図る一試み−

県立石川養護学校教諭

河 野   功

 

一、主題設定の理由

 

一、主題設定の理由

 

自閉児の主要な症候の一つとして言語行動の障害があることが認められ、数多くの研究がなされてそれなりに実績が上げられている。

しかし、一人一人の自閉児がそれぞれ独特の言語行動を呈するため、その対応、指導に困難を来しているのが現状であろう。

本対象児は、割合早期から配慮した養育がなされてきたためか、自閉児としての症状のいくつかは改善され、指導し易くなってはいるものの、未だ人間関係を結ぶことが希薄で集団活動から逸脱することが多く改善の余地がある。

また、言語面に目を向けると、独語や即時エコラリアなどの自閉的な言語症状があり、十分な会話が成立しない等、コミュニケーション行動にも問題点がある。このことは、本児が社会生活を送る上で大きな支障を来すものと考えられる。

幸い、本児はひらがな文字の読み書きができるので、文字活用という面に着目し、文字を使って考えをまとめる習慣を形成し、話す能力を高めていけば、次第に反響言語が少なくなり、会話が成立するようになるのではないかと考えた。

このことが、本児のコミュニケーション能力を伸ばす一助ともなり、ひいては、自閉児の望ましい言語行動形成の在り方を見つけ出す手がかりを得ることができるであろうと思い、本主題を設定した。

 

二、研究仮説

 

(一) 学校生活全体を通じて、本児への話しかけを工夫して応対の仕方を指導していけば、言語理解力が伸び、上手な話し方ができるようになるのではないか。

(二) 国語科において養われる基礎的な言語能力と、領域・教科を合わせた指導との関連を図るようにすれば、実用化する能力へ発展させることができるであろう。

(三) 日記や作文指導をとおして、考えをまとめる力をつけていけば、想起して話すことができるようになり、反響書語が少なくなるであろう。

三、研究の視点

(一) 反響言語の概念や起因を明らかにし、対象児の実態を把握する。

(二) 自閉児の話しことばの発達に関する教材・教具等についての実証的研究を深める。

(三) 反響言語の消去を図る方法、特に

 

 

 


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