教育福島0136号(1989年(H01)01月)-036page
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たあと、綴ったものである。
一度日記に記録したことは確実に想起して話したり、記述することができるようになってきている。勿論、このようなときは反響言語は消失しており、教師の質問にも返答することができる訳である。
この頃になると、学級朝の会で行う“きのうのこと”の話し合い活動でも日記の内容が中心ではあるが、自分で体験したことなどを話すことができるようになっている。
この日記指導を始めたのが五月中旬であるから、ここまで到達するのに八か月余かかったことになる。
3、日記指導の効果と変容
本事例では前述の長期記憶と認知過程に着目し、日記の活用を試みた。
この方法は、事実を記録するということで本児に考えさせ、記憶を確かなものにしたためか、翌日のみならずかなり後になっても、事実を想起して返答することができるようになってきた。すなわち、日記に記述したことは口答でも、筆答でも可能になったのである。
文章を綴る能力の乏しい本児に、毎日欠かさず記録させてくれた家族の協力には感謝しなければならない訳であるが、その過程に相互交信の場があり、心の交流を深めることができたと思う。二月上旬には、食べること以外では初めて「オカアサンフトン、シイテクダサイ」と要求語ができるようになったという。
教師側にとっては、家庭での生活の様子の概要を知り、好ましい働きかけの準備ができること。そのことや毎日のコメントをとおしてよりよい交信ができること、人間関係を深めることなどの効用があった。また経験したことを綴る、手紙文を書くなど、文章表現の基礎能力が身についてきているので、指導の見通しが立て易くなってきている。
次のサイコグラムは、本児の変容の一部である。
CLAC3)の変容の様相(六一・七・六二・二)
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紙面の都合で詳細に報告できないので、実践の概要の記述にとどめる。
○対象児 M・S 小学部四年男九歳
○週四時間の教科別の指導が本児の直接の指導の場である。
1、現状における問題点の要約
(1) 対人的疎通性が乏しく、友達や教師への働きかけが少ない。
(2) 時折パニック状態に陥ることがあり、意思の交換が困難である。
(3) 反響言語があり、会話が成立しないことが多い。
(4) 同一生保持・固執傾向があり、指示等の理解が困難である。
(5) 文の読み書きができるが、内容を把握したり、実用的な文を綴ることが上手にできない。
2、指導の視点
(1) 働きかけを多くし、話し合い活動ができるようにする。
(2) 簡単な文の内容をとらえさせながら、読解力を養う。
(3) 文章題をとおして読解力の伸長を図る。
(4) 文を綴る体験をとおして、記銘力を培うとともに、話し方や作文の基礎能力を確かなものにする。
(5) 作文の推敲をとおして、正しいことばの使い方に慣れさせる。
3、指導方法
(1) 休憩時間などを活用し、ラポートの成立を図るようにする。
(2) 読解力を高めるための指導が計画的に行われるようにする。
(3) 国語科指導上の留意事項
ア 話し合い活動ができるように分かり易いことばを使い、理解言語を増やすようにする。
イ 反響言語で返答した場合は、再質問するとき理解し易く説明したり、正しい応答の仕方を言ってやるなどして改善を図る。
ウ 絵ばなしの読み書き1簡単な文章の読み書き−説明文の読み−物語文の読み−実用文の読み書き等系統的な指導をして理解を深める。
エ 経験したことを綴らせる場合、
OHPを使用しての推敲の学習
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