教育福島0136号(1989年(H01)01月)-037page

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話し合いを十分行い、順序よく書かせるが、自分で体験したことを相起する力や、書いたことを記銘した記憶する力を養う。

オ 週二単位時間の指導なので、効率のよい指導方法を工夫する。

(4) 算数科指導上の留意事項〈略〉

4、指導の実際

ここでは日記と作文指導についての概略述べることにする。

(1) 取り上げた教材のこと

きのうのこと−日記−夏休みの思い出−いもに会のこと−−りんごがり−白鳥見学

M児は書写能力が高いので、S児に試みたことを基盤におき、いわばそれを追試し、更に発展させられるような計画を立案した。教師が子どもの経験を共有すれば、子どもの動きが分かり、適切な働きかけができるので、それだけ教育効果を高められると考え、学校行事等を中心とした教材に絞ってみた。

 

(2) 作文指導の事例

 

(2) 作文指導の事例

次の作文には、M児の特徴がよく表われている。ここに見られるように、助詞の使い方が上手にできないことが多い。このことは会話がうまくできないことに一脈通じる点がある訳で、自他の関係や文法構造を十分理解していないことを示していると思われる。

 

て、言語の基本的理解を図り、適切な使い方ができるような指導に努めた。

 

そこで、実物を使って動作化したり、推こうの指導をするなどして、言語の基本的理解を図り、適切な使い方ができるような指導に努めた。

 

推こう後の作文(部分)

六、研究のまとめ

 

六、研究のまとめ

 

(一) わかったこと

一、自閉児の中でS児やM児のように、比較的に知的能力が高く、文字の読み書きができる段階に到達した児童の場合は、文字使用の習熟を図りながら、それを実際の生活場面に活用することができるようにする−生活化を図る−ことが大切であり、人との関わりを重視した言語指導が望まれる。

2、反響言語の改善の一方法として次のような手順を踏んだ指導も有効である。

理解言語を増す−児童の生活背景を知る−記銘力を伸ばす−働きかけ・問いかけの方法を工夫する−文法の理解を図り、話し方を具体的に指導する。

なお、記銘力を伸ばす一方法として、話すことや経験したことなど、読ませたり書かせたりすることも考えられる。

3、児童とのラポートの成立を図りながら、言語活動がコミュニケーション行動の有効な手段であることを理解させて、日常のあらゆる場面で適切な使い方ができるようにすることが重要である。

この場合、自閉児の多くは集団活動から逸脱し易く、友達ともなじめないという短所を有するので、教師を媒体として多くの働きかけをするようにしたいものである。いかにして他を意識させるかということである。

(二) 残されたこと

1、S児やM児の今後の指導の在り方及び研究のアフターケアの仕方を考え、指導が中断しないようにすること。

2、文字の読み書きができない段階にある児童の反響言語の改善を図るためには、どのような手続きを踏めばよいかを追究すること。

3、知的能力が比較的低い児童のコミュニケーション能力を高めるための指導法の研究を深めること。

○今後ともケースバイケースの実証的研究の実践に努め、その一般化の方法を考えていくようにしたいと思う。

 

 

 


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