教育福島0137号(1989年(H01)02月)-039page
(二) 総合的造形活動への試み
1) 学校生活に生かす造形活動
・休憩時の造形活動の工夫春(草花遊び)・夏(石・砂遊び)秋(木の実・木の葉遊び)冬(紙・ひもによる造形遊び)
2) 国語科学習に生かす造形活動
・ぺープサートづくり
・絵本づくり
・紙しばいづくりなど
3) 社会科学習に生かす造形活動
・学校探検地図づくり
・公園づくり
・通学区の立体模型づくり
・成長アルバムづくり
4) 算数学習に生かす造形活動
・かたちづくり
・型押し(スタンピング)
・はこづくり
5) 理科学習に生かす造形活動
・石遊び
・木の実や木の葉遊び
・風で動くおもちゃづくり
・ごむで動くおもちゃづくり
これらの造形活動を生かすことにより、子どもの興味関心が高められ、意欲を持って生き生きと学習に取り組む姿や楽しく遊び回る姿が見られるようになった。
低学年の児童にとって造形活動は欠くことのできない自己表現の手段であり、互いに認め合うことによって学習の意欲を喚起し、学習の幅を広げるとともに理解を深めるのに大切な活動であろう。
(三) 造形活動を生かした合科的な指導
〈実践例〉 (実践記録略)
・ 理科を中核とした実践
「石あそび」「木の葉で遊ぼう」「ごむで動くおもちゃを作ろう」
・ 音楽科と図画工作科を中核とした実践
「たなばたまつり」
・ 算数科を中核とした実践
「かたちづくり」
これらのことから子どもたちは楽しく活動する中で指導内容を自分のものとしていった。具体的な活動の中で試行し、友だちと比較しながら、よりよいものを創ろうとする構えが見られた。友だちに支えられてがんばっている姿の中に共に高まろうとする構えも見出すことができた。
(四) 造形活動を生かした交流活動
聾学校の子どもとの交流が、子どもにとって充実したものとなるよう、造形活動を取り入れ、効果的な交流の場の設定や交流の方法の工夫に努めた。
障害を克服しようと努力しがんばる姿は、子どもたちに日々の生活態度や学習態度を反省させ、自分たちも負けずにがんばろうとする意欲を高めてくれ共に伸びようとする姿がみられた。障害児の人間としてのすばらしさに触れることができ、思いやりの心を持ってあたたかく接することができた。障害など互いに忘れたかのように活動する姿が見られた。
(五) 図画工作科の授業の充実(略)
五、研究の成果と今後の課題
(一) 子どもたちの姿に見られる研究の成果
1) 共に学ぶ楽しさを知る子ども
運動面でも学習面でも遅れが目立つS君。そんなS君がはじめて大きな声で音読できた時、どこからともなく拍手がおこった。「上手だったよ」「やったね」と声がとぶ。友だちのことを自分のことのように素直に喜べる子どもの心はすばらしい。
2) 生活を豊かにする子ども
「ねえ、ねえ、どうするの」「こうするんだよ」「もっとこうするといいんだよ」と、休憩時や放課後の子どもたちの話し声。
そこには、男の子も女の子も仲良く教え合い楽しく工夫して造形遊びする子どもの姿がある。子どもたちの生活の中にも造形活動に親しみ生活をより楽しく豊かにしていこうとする動きが見えてきた。
3) 高め合う子ども
「あのね、あのね。T君なわとび跳べたんだよ」「ねっ。すごいでしょう」と我先にかけよってきて口々に言う。日曜日、公園で練習したという。みんなで教えてあげたんだよと、どの子もうれしそう。そんなT君は折り紙の名人だ。休憩時には手裏剣などいろいろ折って友だちに教えている。など……。
その子なりの良さを生かし共に高まろうとする構えを学級生活の中で垣間見ることができた。
(二) 今後の課題
これまでの取り組みの中で見せてくれた子どもの姿には生き生きと活動する姿があったが、実践の中から見出されたものは、課題の方が多い。
子ども自身の手で自分たちの生活をより豊かなものにしていこうとする意欲的積極的な生活学習態度と望ましい人間関係を育てるための総合的造形活動の在り方、場の設定等にさらに検討を加えたい。特に学校環境に応じ、地域の素材で子どもの発想と主体生を生かす活動の開発をしたい。
これまでの実践を足がかりとして、課題解決に努力していきたい。
「槻の木まつり」で聾児と楽しくダンスする子どもたち