教育福島0138号(1989年(H01)04月)-043page
事物や事象の提示のしかたや発問等を工夫する。
(2) 共通課題と個人課題の設定
共通課題は、児童のこだわりを生かし、教師の指導のねらいも加味し、単元を通し全体で取り組む課題である。
個人課題は、共通課題を解決するために、一人一人が自らのこだわりに基づいて特に追究してみたい課題である。この場では、自らの意志で課題が選択設定できるように援助指導に努める。
(二) 手立て2))具現の場の設定
(1) 一人調べ(一人学び)と課題コース別小集団学習一共学び)の取り入れ
一人調べでは、一人一人が自分の考えや感想が持てるように予想を立ててから取り組ませるようにする。
課題コース別の学習では、班毎に、一人一人が調べたことや考え・感想を出し合わせ、発表に向けて資料や「考え・感想」の原稿を分担と協力により作成させ発表の準備をさせる。この場では、班内の構成をみて指導を加え、活発な活動を促していく。
(2) 全体の場での各班の発表
発表内容をメモさせ、納得したところは赤線を引かせる。また、質問や意見を出したいところは青線を引かせ、活発な質疑応答や討論ができるようにさせる。この場では、教師も討論に参加する一人として意見を述べたり、重要な箇所での注意や発表が行き詰った時に援助助言したりする。
(三) 手立て3))具現の場の設定
(1) 「自分の考え、授業の感想」(略して「考え・感想」・ノート)
児童のノートに赤ペンで指導を加え、一人一人の学び方を深めたり、学習内容の把握状況をつかんだりすることに努める。また、ノート資料の蓄積によって、指導を反省したり、児童の学び方の特性や特質を把握したり、児童の変容をみたりするのに役立てる。
(2) 自己評価票「学習をふりかえって」の活用
ふりかえる項目は次の通りとした。
●勉強したことが分かりましたか。
●調べたことに満足しましたか。
●発表に満足しましたか。
●友だちの発表に質問や意見がありましたか。
●発表はためになりましたか。
●自分なりの考えを持つことができましたか。
以上の項目を五段階評価させ、「次にがんばろうと思うことは何ですか」については文章で記述させる。
なお、教師側の評価と児童側の自己評価を関連づけながら、指導の効果および問題点を明らかにしたいと考えた。
三、研究の概要
(一) 授業の実際と考察
手立て1))、2))、3))の具現化を図りながら実践した六小単元(「古墳」、「大仏」、「戦国時代」、「江戸時代」、「明治維新」、「人権を守る政治」)のうち、ここでは、「大仏」の学習のみを記すこととする。
◎ 「大仏」の学習−小単元名「聖武天皇と奈良の大仏」
本単元では、大仏のてのひらの実物・大の型紙を用い、その上に何人上がれるかといった活動をさせ、全身で大仏の大きさを実感させようとした。この活動を通して「巨大な大仏はどんな人々のどんな働きや考えで造られたのだろうか」という共通課題を設定できた。また、設定された個人課題は、造らせた人と実際に造った人に分かれ計七つになった。
その後、インタビュー形式で、当時の人に聞きたいことやどんな答えがかえってくるかの予想を考えさせ、その予想をもとに一人調べに入った。班で作成する発表資料は、歴史マンガをTPにしたり、児童のふき出しコメントが記された資料を作ったりして、分かり易い資料作りがなされていた。しかし、まだこの段階では活発な意見交換がなされるまでには至っていなかった。
全体の発表後、天皇や農民の立場から大仏づくりの感想をふき出し文で記入させたが、学習内容は確実におさえられていた。ただ、ふき出し以外に「考え・感想」をノートに書かせたので、書く活動が多く、時間超過をしたことが反省点として残った。
(二) 児童の意識調査からみた実践の分析
一年間のしめくくりとして学年末に、社会科の学習に対する意識調査を実施した。その主なものをあげると次のとおりである。
○ 自分で調べたいことが調べられ、調べるのが面白かった。
○ 調べたことが発表でき、質問するのが楽しみだった。
○ 自分の考えが持て、その考えが自由に述べられた。
総じて、社会科の授業は「楽しい」「分かり易い」という児童が増えていた。このような点からも、今回、前述の手立ての具現化を図りながら実践を積み重ねてきたことによって、「児童の側に立つ授業」の創造に近づくことができたのではないかと思われる。
四、今後に向けて
○ どのような単元のどのような内容に課題コース別学習が有効なのか検討していく必要がある。
○ 児童自らの評価を大事にしながら、
自己評価と教師側の評価にどのよう
大仏の実物大のてのひらにのる