教育福島0138号(1989年(H01)04月)-053page

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博物館ノート

縄文の墓

上ノ台遺跡(田島町)

博物館の考古分野では、これまでに泉崎村原山一号墳(古墳時代)、高郷村塩坪遺跡(旧石器町代)、白河市明戸遺跡(弥生時代)、二本松市塩沢上原A遺跡(縄文時代中期)、常葉町富作遺跡(縄文時代早期)の発掘調査を実施し、各時代における福島県のようすを明らかにしてきました。そして六番目の調査対象として、南会津郡田島町糸沢にある上ノ台遺跡を選び、昨年十月に発掘調査を実施しました。南会津地域における縄文町代中期(今から約四千五百年前)の人々のくらしや社会、生活環境を究明することを目的に調査を行いました。

調査は田島町教育委員会と地元の方々の協力のもと、約一か月間に及びました。調査が進むにつれ、今回調査した約三百平方メートルの区域は、当時の墓域であることが次第に明らかになってきました。いわゆる土葬の跡で墓あなは数十基あり、それぞれの墓の上には大小の石が置かれ、墓標のような立石もありました。墓の中には人骨は残ってませんでしたが、供物などを供献ずるために一緒に埋めたと考えられる多数の土器がはいっていました。土器は東北地方のものばかりてなく、関東、中部、北陸各地方に分布の中心を持つものが混在していました。このことは、当時の南会津地方の人々がその地理的判例

を生かしてさまざまな地域の人と交流していたことを物語っています。

今後博物館では、この貴重な遺物を更に詳細に分析し、研究を重ねて二年後に報告書を刊行する予定です。

上ノ台遺跡の整理作業

上ノ台遺跡の整理作業

上ノ台遺跡出土土器(中央は深鉢 他は浅鉢)

上ノ台遺跡出土土器(中央は深鉢 他は浅鉢)

(博物館の活動)

研究成果を調査報告書として刊行

県立博物館では、通常皆さんにご覧いただく「展示」以外に、さまざまな研究活動が行われています。

その研究範囲は、考古学、民俗学、文献史学、美術史学、地質学、古生物学など多岐にわたっており、それぞれ専門の学芸員が研究に従事しています。各々の分野の研究成果は、毎年「県立博物館調査報告書」として刊行され、一般の方々にもご覧いただけるようになっています。報告書は昨年度までにすでに十九集を数えるようになりました。

このような研究活動を通して、福島県のなりたちや歴史を明らかにしていくことも博物館の重要な仕事のひとつなのです。また、年四回開催している企画展も、これらの研究活動を基礎として企画、構成されているのです。

刊行された調査報告書の数々

刊行された調査報告書の数々


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