教育福島0139号(1989年(H01)06月)-010page

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と呼びます。わが国は、あと四十年で世界史上に類を見ない高齢化率を達成するといわれます。つまり、今三十歳の人が七十歳になる時です。高齢化とは、人間の障害化をも意味します。

今の三十歳代の人が高齢者になったとき子どもたちが大切に処遇してくれるかどうかは、子どもたちをどう育てるかによって決定されます。

障害者の社会参加の基盤の形成は、高齢社会がはらむ問題と軌を一にしており、社会そのものが障害者に近づき適応していくプリンシプルの確立が必要なのです。

 

四、社会参加を目指した教育の実際

 

1 盲学校における教育

 

(1) 盲学校の概要

 

盲学校では、盲児と強度の弱視者等を対象として教育が行われています。

盲児とは、視力(以下、視力という場合は、両眼の矯正視力を指す)が概ね○・〇二未満の者で、普通の文字(墨字という)を用いて学習することが著しく困難又は不可能な者をいいます。また、視力が○・三未満の者のうち、墨字を用いて学習することが可能な者を一般に弱視児といいます。

盲児に対しては、触覚教材(点字、オプタコン、立体コピー、レーズライター、点字ワープロ、自作教材等).の非視覚的方法によって学習がすすめられています。

弱視児に対しては、拡大文字、VTR等の視覚的方法によって学習が行われています。

盲学校には、小学部、中学部、高等部が設置されており、一貫した教育が行われています。

 

(2) 社会参加を目指した指導

視覚障害児が社会参加を図るためには、障害に起因した行動上の問題や心理的側面の問題を十分把握して、その障害の状態を改善したり、克服したりするための様々な指導が必要となります。

晴眼者は、日常生活上必要な情報の八十五パーセントを視覚にたよっているといわれますが、視覚障害児は、直面する日常生活のかなりの部分で、情報入手の不足という重大な状況にあるため、周囲の人や物との関係を瞬間的にとらえることができず、自分の位置を確かなものとして感じとることができにくいといわれます。また、話のイメージ化が乏しかったり、内容理解が難しいことがかなりあります。

そのため、盲学校では、視覚以外の感覚を十分に活用して、空間の広がりや状況把握ができるよう指導を行っています。

例えば、白杖を使って一人で歩行できるようになるために、白杖の使い方はもちろん、路上の様々な情報を白杖の反響音や手ごたえ、多くの雑音から立体的に理解できる力をつけたり、膚で感じる風の流れや圧迫感などを、自分の行動と併せて理解できる力をつける指導が行われています。また、両手を使って、安全に十分配慮しながら事物の触察ができるようになるための指導も行われています。

以上のような指導は、養護・訓練に位置付けられ、学校生活のあらゆる場で配慮され、実践されています。

二つ以上の障害を合わせもつ重複障害児においては、その時々に、身辺自立から職業自立までのどの段階が、その子の社会参加を目指した目標とすべきかを見きわめ、無理のない、そして確実な指導が行われています。

就学前盲幼児教育相談事業が小学部の指導の一端として位置付けられ、見えない、見えにくい(一次的障害)から生ずる情緒不安定等(二次的障害)の発生を防ぎ、小学部の生活がスムーズに始められるよう指導し、両親の不安や悩みに応えるための援助(養育指導)が行われています。

小学部においては、基礎学力の向上に重きをおき、通常の小学校に準じて、各教科等の指導が行われています。

中学部においては、各教科等の指導が小学部同様に行われています。進路指導も具体的になり、社会自立への意識が高まってきます。卒業生は、高等部へ進学しますが、一般高等学校へ進学する者もいます。

高等部においては、普通科の他に保健理療科(本科)と理療科(専攻科)がおかれ、はり、きゅう、あん摩の専門教育が行われています。はり、きゅう、あん摩は、視覚障害者にとって、伝統的な、社会自立のための職業でした。ところが、近年、晴眼者の進出に伴い、盲学校の卒業生の職域を圧迫してきています。盲学校にあっては、晴眼者と同程度、又はそれ以上の技術力を身につけること、魅力ある人間性を備えさせることに力を注いでいます。

 

(3) 指導の実際

1) 保健理療科(本科)

各教科等の学習の他に、あん摩、マッサージ師、指圧師の免許を取得す

理療科でのあん摩実習

理療科でのあん摩実習


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