教育福島0139号(1989年(H01)06月)-011page
る専門教育が行われています。卒業後は、専攻科へ進学する者、大学受験を目指す者、県内の診療所、病院、ホテルなどのマッサージ師として就職していく者がいます。
2) 理療科(専攻科)
高等部卒業程度の学力を有する者が選抜試験で入学してきます。はり、きゅう師の免許が取得できる専門教育が行われています。医療に準ずる内容のため、かなり高度な技能を要求され、県立医大での授業実習もあります。卒業後は、県外、県内の病院、医院等に就職し、開業する者もいます。
2 聾学校における教育
(1) 聾学校の概要
聾学校では、聾児一強度の難聴児を含む)を対象に教育が行われています。
聾児とは、両耳の聴力レベルが、百デシベル以上の者及び、百デシベル未満六十デシベル以上の者で、補聴器の使用によっても通常の話声を理解することが不可能又は、著しく困難な者をいいます。
聴覚障害児は、聴こえにくい不自由さ(一次的障害)だけでなく、一次的障害の結果として、言語の習得が遅れ、コミュニケーションや意思の疎通がうまく図れないという二次的障害を引き起こしています。そこで、聾学校では、早い時期から補聴器を装用させ、大脳を刺激し、音の発見、聴き分け、ことばの指導が行われています。
聾学校には、三歳未満教育相談、幼稚部、小学部、中学部、高等部が設置されていて、社会自立を目指した一貫教育が行われています。
(2)社会参加を目指した教育
聴覚障害児が社会参加を目指すとき言語習得は、欠くことのできない課題です。日本語を理解し、日本語が正しく使えるということは、聴覚障害児が生きていく上で重要なポイントとなるのです。
健聴児は、生まれる前に母親のおなかの中で母親の声を聞き、生まれてすぐ母親の声を聴き分け、心の安定を図るといわれます。そして、母親や父親の何万回何十万回という話し掛けで自然と言語を習得していくのです。ところが、聴覚に障害があると、音を全く知らずに生まれ、その後の音声入力ができない状況にいると、言語習得に大きな遅れが生じてきます。
そこで、聾学校では、早期から補聴器を装用させ、音の発見から音には意味があることを聴覚障害児に気付かせています(聴能の発達)。これは、年齢が低ければ低いほど結果が良好です。また、自然な言語習得のできる環境を意図的につくり、幼児の自発的な学習(発音の良し悪しを気にせず話しまくる)を促しています。さらに、幼児期を人格形成上重要な時期と位置付け、人の真似をする(情報入手が不十分だと周りの人の動きを見て、それに倣うという消極的な行動をとる)のではなく、自分で考え行動できる力をつけること、情緒不安定(意思の表現法が分らない、発音が不明瞭でうまく伝わらないことによる)をできるだけ解消するため、意思を伝達(音声、指文字、文字、絵、写真、サイン等で)する力をつけることを目指して指導を行っています。
音声に反応を示さない重複障害児においては、写真、絵、サイン、文字、指文字等により、行動調整や意思の疎通ができるよう指導を行っています。
小学部においては、身近な事柄を詳しく表現できる力をつけ、たくさんの本を読み知識を得ようとする意欲を育てています。さらに各教科等の学習も始まり、基礎学力を身につけさせるよう指導が行われています。
中学部になると、自分の責任を果たし、最後までやり抜く力をつける、他の人を思いやる心を育てる、社会の一員として生きていく自覚をもつ等、社会自立を意識した指導が行われています。また、学力向上と、クラブ活動にも力を入れて指導が行われています。
高等部においては、普通科の他に、産業工芸科、金属工業科、被服科が設置され、社会自立に必要な職業的技能の習得を目指しています。また、製品に加工するまでの過程を通して、文章で指示されたものを注意深く読み取ることができる力をつける、周りの人々とのコミュニケーションの必要性を膚で感ずる、そして、責任をもって作業に当たれる人間性を育てていく、これらのことも重要な指導内容となっています。
(3) 指導の実際
1) 産業工芸科
産業工芸(木材)に関する知識・技能の習得を通して、職業人としての望ましい態度の育成に努めています。インテリアの基礎や、家具等の製作の実’習を行っています。卒業後は関連業種に限らず、機械工、技能職として県内外へ就職していきます。
2) 金属工業科
機械の実験、実習を通して、職業自立のための基礎的な態度、能力の育成に努めています。板金塗装や金属加工の実習が行われ、卒業後は、組立工等として就職していきます。
金属工業科での金属加工実習