教育福島0139号(1989年(H01)06月)-013page
業を通して、必要な技術・技能を身につけさせるだけでなく、働くことの意義、目的を理解させ、働く意欲や働く態度、協調性など、日々の学校生活、社会生活に必要なことがらを身につけさせていきます。また、校内での実習だけでなく、企業や地域の人々の協力を得て現場実習も行っています。
4 肢体不自由養護学校における教育
(1) 肢体不自由養護学校の概要
肢体不自由養護学校には、手足や体幹に運動機能障害をもつ児童生徒が学んでいます。障害の状態は、不自由な個所や程度により様々です。近年、肢体不自由養護学校には、中枢神経系の運動機能障害を有する児童生徒が増えその割合は過半数を越えています。さらに、言語障害や精神発達遅滞を伴う場合も多く、障害の重複化、多様化の傾向にあり、それらに対する教育内容及び方法の改善充実が大きな課題となっています。
県内には、郡山養護学校、平養護学校及び同翠ケ丘分校があり、それぞれ小学部、中学部、高等部(分校にはなし)が設置され、約三百五十名の児童生徒が学んでいます。
(2) 社会参加を目指した指導
小学部及び中学部における各教科、道徳、特別活動並びに高等部における各教科、特別活動の指導は、小学校、中学校及び高等学校のそれと基本的には異なるところはありませんが、このほか、運動機能の障害に基づく種々の困難を克服させるため特別の指導領域として、養護・訓練(運動、動作の習得及び改善、意思の伝達向上等)が設けられ、社会参加を目指して幅広い教育を行っています。特に、小・中学部、あるいは小・中・高等部の一貫した教育を通して一人一人の発達段階や能力に応じて社会参加ができるように指導が行われています。
また、高等部には普通科が設置されていますが、卒業を目前にひかえ、各学校では職業に関する教科として、商業(簿記会計、文書事務等)、工業(製図、木材工芸等)、農業(農業基礎等)、家庭(被服等)などを選択できるようにし、職業教育にも力を注いでいます。
なお、肢体不自由に精神薄弱などを伴っている重複障害児童生徒に対しては、集団生活への参加や日常生活動作の確立を目指して、日常生活の指導や作業学習を中心とした指導及び養護・訓練を中心とした指導等を行っています。
(3) 指導の実際
1) 養護・訓練の指導
運動機能の向上や動作の改善は、社会参加を図る上で、特に大切な指導内容です。養護・訓練は、特別時間を設定したり、あるいは学校教育活動全体を通して指導を進めるわけですが、運動機能の向上や動作の改善のほか、身体の健康、心理的適応、環境の認知、意思の伝達などに関する内容についても指導が行われています。養護・訓練で指導する内容は、教科学習の基礎でもあり、肢体不自由養護学校の教育を行う上では重要なものとなっています。
2) 社会経験領域の拡大
肢体不自由児童生徒は、行動範囲に制約を受け、社会経験領域が狭くなりがちです。このため、教科学習や学校行事等においてできるだけ実際の社会経験を多く取り入れるよう配慮しています。たとえば、公共施設の利用や交通機関の利用、買い物学習、貯金の仕方などの学習があげられます。
また、小学校や中学校、高等学校の児童生徒との交流活動も社会経験領域を拡大する上で重要な活動です。心身に障害のある児童生徒が、障害のない友達をはじめ地域の社会の人々と活動を共にすることは、経験を広め、社会性を養い、好ましい人間関係を育てるために意義あることです。このため、教育課程に交流活動を位置づけて積極的に推進している学校もあります。
3) 職業に関する指導
ア 商業
商業の科目として簿記会計、商業経済、タイプライティング、文書事務等があります。これらの学習には、ワープロやパソコン、タイプライ
社会参加を目指して小学部からの体力づくり
中学校との野外交流活動で社会経験を広める