教育福島0139号(1989年(H01)06月)-017page

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で重視すべき点について述べる。

 

一、基本的な生活習慣の形成を図る生徒指導

基本的生活習慣は、もともと家庭において、その基礎が形成される。しかし、家庭をめぐる最近の状況の変化は、児童生徒の基本的生活習慣の形成上、様々な問題をもたらし、そのことが、学校生活における児童生徒の自己実現に障害となっている場合も少なくない。

それゆえ、学校においても、望ましい習慣形成のための指導を計画的に進めることが強く要請されている。

学校において指導しなければならない基本的な生活習慣は、1)生命尊重、健康安全に関すること。2)規則正しくきまりよい生活に関すること。3)礼儀作法、社会生活に関することが主な内容である。

これらの指導に当たっては、教師の指示・命令による一方的な、押しつけによる指導でなく、指導の原則である「他律的行為から自律的行為に発展するように指導する」「児童生徒の発達段階に即して具体的、系統的に指導する」「継続的に、反復して指導する」等を正しく理解して、児童生徒の実態を踏まえた効果的な指導方法を工夫することが必要である。

その際、児童生徒の発達段階を考慮して児童生徒の態度や行為の原因となる生活態度の内面を理解するとともに家庭や地域社会との、連携を図って指導することが大切である。

 

二、共感的人間関係を育てる生徒指導

児童生徒は学校生活において集団生活を営んでいる。それゆえ、集団を構成する人的要素は児童生徒の自己実現に大きな影響を及ぼすこととなる。

問題行動をとりやすい児童生徒においては、その人間関係が十分でないことが大きな特徴であり、緊張を強いられる人間関係の中で自己発揮が阻害されている事実は数多く知るところである。

児童生徒が存分に自己発揮し、自己実現を図っていくには、教師と児童生徒及び児童生徒相互の間に望ましい人間関係が存在していることがどうしても必要である。

児童生徒と教師との間に信頼的で共感的な人間関係があること、及び児童生徒の間に受容的で安定した人間関係があることが児童生徒の生きる意欲を育み、人格的成長を促すものである。

それゆえ、教師は児童生徒をよりょく理解することに努めるとともに、児童生徒の相互理解と人間関係を深める指導を意図的計画的に進め、児童生徒の安定した人間関係を育てることが大切である。

 

三、自己指導能カを育てる生徒指導

生徒指導の究極の目標は、児童生徒をかけがえのない存在と考え、自己指導能力を育てることである。

そのためには、学校の教育活動のすべてにわたり、生徒指導の機能を十分に作用させることが必要である。

生徒指導の機能として主要なものは「児童生徒に自己決定の場を与えること」「児童生徒に自己存在感を与えること」「人間的ふれあいを基盤にすること」の三つである。

従って、児童生徒が、自分で考えて決めて実行するという自己決定、一人一人の児童生徒が独自な存在として認められることから生じる自己存在感、そして、互いに他の人の間違いを軽蔑することなく受容し合える人間的ふれあいを各教科、道徳、特別活動といった教育課程のすべての領域に機能させていくことが大切である。

中でも、教育課程の多くの部分を占める各教科の授業の中に生徒指導の機能を積極的に作用させていくことが大切であり、自校の児童生徒の実態を踏まえ、生徒指導の機能を作用させる具体的な手だてを工夫していくことが望まれる。

 

四、不安や悩みの解決を援助する生徒

指導

児童生徒は多かれ少なかれ不安や悩みを持っているものである。教師は、児童生徒のもつ不安や悩みを把握し適切な対応をしていくことが必要である。

そのためには教師と児童生徒との信頼的な人間関係を基盤にした教育相談を進めていくことが必要である。

教育相談においては、妥当性のある検査や調査等の客観的な資料を活用するとともに、受容的な態度で接して、児童生徒の自己表現を援助して児童生徒の話を十分に傾聴して、児童生徒が自分自身や自分を取りまく生活環境をどのように受けとめているかを理解することが大切である。

また、教師は人間としての弱さや不安を自覚した一人の生きる人間として、一人一人の児童生徒の行動と心の動きに寄り添いながら、児童生徒の自己理解を深めさせ、児童生徒自身が自らの問題を解決する能力を発達させるように援助していくことが大切である。

しかし、教師が児童生徒理解に基づいて不安や悩みによる問題行動を早期に発見し指導していくことは必ずしも容易なことではない。それゆえ、日常における一人一人の児童生徒との心のつながりを持つ手だてを工夫することが大切である。

日記や個人ノートや定期的な個別面接など児童生徒との内面的なつながりを深める手だてを大切に扱い、問題行動の早期発見と早期指導につながる教育相談を充実して児童生徒の自己実現を援助していくことが大切である。

 

次に掲げる二つの事例は、生徒指導研究校の指定を受け、昨年度研究発表を行った学校の研究の内容である。各学校の実践の参考にしていただきたい。


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