教育福島0139号(1989年(H01)06月)-026page
車窓からの
四季
馬場 清
田島高校に通勤し始めてもう一年が過ぎてしまいました。月日の経つのをとても早く感じます。最初、車で通うか、列車にするかで迷いましたが、家族との相談で取りあえず列車通勤にしました。朝、起きるのが今までより一時間以上も早くなり、初めのうちは眠くて慣れるまで時間がかかりました。・西若松駅から乗車しますが、同じ田島方面の職場へ通う人とも顔なじみになり、乗車一時間の車窓からの景色の変化を眺めるのが何よりも楽しみになりました。前任校のときには家から五分足らずで、季節の変化を周囲の情景からはあまり感じとれませんでしたが、列車から観る風景は季節感を感じさせるものばかりでした。
春、雪解けの水の周りに青々とした野草が萌え初め、山吹の黄色が緑の木々の合間に見え隠れします。田植えの準備で田んぼの堀り起こしも始まります。その後、梅、桃、桜が一斉に咲き始め、桜では湯野上温泉駅周辺が見事です。山ツツジの赤やピンクの彩りもきれいですし、五月中旬田植えが終わると、水田は緑一色。六月ころになると藤の花や桐の紫で鮮かになります。稲も分けっし、苗が増え、丈が伸びていく様子が日々分ります。夏、稲の穂が出、野カンゾウの燈色や山ユリの白さが目に入ります。秋、田一面の黄金色から、稲刈りが終わると、ススキの穂の白さ、そして頂から下りてくる紅葉は、まさにペルシャジュウタンを敷きつめたように見えます。昨年は例年になく初雪は早く降りましたが、記録的な暖冬で量は多くなく、通勤も楽でした。初冬の十一月中旬などは、会津下郷駅近くで、雪が止むと快晴の空を背景にした那須連峰の山々が映り、一幅の絵画を観るようでした。このように車窓から観る四季の移り変わりは、疲れをいやし、毎日の仕事への活力を与えてくれたようでした。
生活環境が変われば見る目も変わります。生徒を見る目も角度を変えて見れば、いろいろ発見があるはずです。前任校の良さを認識し、本校での良さを一つでも多く発見し教師生活の糧としたいものと思っています。
(県立田島高等学校教諭)湯野上温泉駅を飾る桜並木
挑戦の日々
星 健一
私の住んでいる常葉町は、阿武隈山系のほぼ中央部に位置する、美しい自然に囲まれた高原の町である。ここに赴任して、早くも四回目の春を迎えた。
ある日の放課後、女子生徒四人が話しかけてきた。私は、彼女たちに勉強の進み具合を聞いてみた。ある女子生徒は、「理科の応用問題が苦手なんです」と、明るい声で返事をした。他の女子生徒も、その発言に、皆、うなずいた。
「とことん考えれば、どんな問題でも、きっと解けると思うよ」
私は、自分の経験を踏まえて答えた。すると、別の女子生徒が、
「先生は、勉強することが好きみたいですね」
「好きじゃないけど、同じ勉強をするなら、何か、やる気が起きる方法を探してから勉強した方がいいと思ってやってきただけだよ」と、私は答えた。そして、「やる気と言っても、難しく考えることはないよ。『○○さんはできるからいいなあ』なんて、他人とばかり比較していると、落ち込む一方だ。それよりも、きのうの自分ときょうの自分とか、きょうの自分とあすの自分というように、比較の対象を自分自身に置くと、勉強がおもしろくなるよ」と話してやった。その後、四人の生徒たちは、一生懸命、理科の応用問題に取り組むようになった。
私は、彼女らとの話を通して、知識の詰め込みにばかり気を取られ、生徒の意欲とか、生徒に分り易い指導の手だてとかに余り注意を向けてこなかった自分自身に気づいた。
そこで、その数日後、学級で次のよ