教育福島0139号(1989年(H01)06月)-027page
うな話をした。
「君たちの中には、『勉強ができないから、やっても無駄だ』という人がいる。だが、『できる』『できない』の問題ではなく、要は、『逃げているか』『挑んでいるか』という、学習に取り組む姿勢が問題なんだ。
例えば、英語が苦手だ、数学が苦手だ、だからやらない、という逃げの姿勢では駄目だ。つらいけど、がんばってやってみよう、苦手だけど、挑んでみよう、という積極的な姿勢で進んでいったときに、君たちの可能性は、無限大に広がってゆくんだ」
この話は、生徒たちの心を動かした、勉強に、部活動に、がぜん張切って挑戦する生徒が数多く現れたことは、望外の喜びであった。
教師の役割が、知識を教えるだけでなく、生徒の意識の変革を促すものとするならば、私は、常に、生徒の姿勢を変える指導の技術の開発に挑戦する教師でありたいと願っている毎日である。
(常葉町立常葉中学校教諭)
総力結集
武田 昭
「あっ、できた。A子ちゃんできたのね」「さか上がり」の個別指導に当たっていたM子先生の興奮した甲高い声が、体育館いっぱいに響いた。先生方が駆寄り、A子は大きな拍手に包まれた。
A子は、練習でほてった真赤な顔で目を潤ませ、荘然と震えの止まらない両手の平を見ていた。その手の平には豆が碗豆のようにふくらんで並び、やがてその上に、美しい涙がぽとぽととこぼれ落ちた。
昭和四十九・五十年度、県の研究指定校となったS小学校当時のすばらしい思い出の一つである。
「器械運動」を中心に研究を推進したが、個人差が大きいため、二十七名の全教師で放課後「できない子」や「つまずきのある子」の指導をすることになった。つまり、共通の目的に全教師の力を結集したのであった。
実技指導に入る前に、家庭での生活状況や学校での遊び、行動範囲、交友関係、既習題材の技能の実態等について各担任が調査し、その結果について検証するため、領域別に第一回目の実技指導を行い、一人一人のつまずきの実態を全教師でチェックし、個別指導計画を立てた。
五年生のA子は、肥満傾向の子で、体育は大の苦手、特に鉄棒運動が嫌いな子である。しかし、負けず嫌いな子であり、なんとか五年生の題材をこなしたくて、それの前提条件である「さか上がり」ができるようになりたいと、休み時間のたびに鉄棒につかまり、友だちと練習をしていた。
鉄棒のにぎり方はどうか。手首のかえしは。足の振り上げの方向は。……こまかなチェックをもとに、教師側の創意工夫と児童たちの努力が始まった。
腰と鉄棒を手ぬぐいで固定しての練習。とび箱やろく木、腰板を利用しての足の振り上げの練習。教師の補助の仕方はどうか。……そしてやっと「さか上り」ができたA子や教師の喜びはなにものにも変えられなかった。
教師にとっては、教えることだけでなく、この指導体験は自分が教わる貴重な場でもあった。その後の指導が、いかに効率的になったか説明するまでもない。
学校の活生化が叫ばれているが、そのためには、このような全教師の力の結集が必須条件と考える。
本校では、今年度、算数の計算力を高めるため、既習事項についての「つまずき発見テスト」を実施し、その結果を分析してっまずきごとのグループを編成し、全教師で分担して補習を行い、「数と計算」領域の基礎的、基本的事項の完全習得を図る構想が立てられている。方法的にも十分に共通理解を図り、無理なく、無駄なく、あせりなく、全教師の力を結集させて、この計画を是非とも成功させたい。
そして、児童のつまずきを除去し、自ら学ぶ意欲を高め、自己教育力の育成に結びつけたい。
(新地町立福田小学校教頭)
徒然川
渡部京子
ある日の早朝、夫に誘われて伊南川へ行った。陽がのぼる寸前の朝焼けの空、さわやかに澄んだ空気、美しい伊南の自然を川面に写し、滑らかに流れる伊南川に思わず見とれてしまう。
私はここで生まれ、ここで育った。小さいころ、よくこの川で泳いだものである。すっかり忘れてしまっていた子どものころの感動が、次々と胸にあ