教育福島0140号(1989年(H01)07月)-014page

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児童生徒の学力の実態を把握し、指導計画を改善、充実しても、日々の授業が改善されていかなければ、基礎学力の定着を図ることはできない。

県教育委員会は、特にこの点を重視し、平成元年三月に「基礎的・基本的内容の確かな定着を図るための努力点」と題する冊子を発行したが、更に各教科等について、次の観点による努力が必要である。

 

(1)教材研究の深化と教科書の取り扱い。

教科書は、学校教育において使用される教材の中で、学校教育目標の達成に向けて、指導内容を児童生徒に伝達する手段として中心的な教材としての役割を持つ「主たる教材」である。

実際の授業において、教科書教材を取り扱う場合、学習指導要領との関連において、指導内容、基礎的・基本的事項、学年の系統性など十分研究をすることが必要である。教材の中の「何が」基礎・基本であり、「どうすることが」基礎・基本の定着を図ることになるのか、個人や共同で十分研究を深めることが大切である。

(2)授業の質的改善

基礎的・基本的内容は、児童生徒一人一人をしっかり見つめ、十分考えさせたり、感じとらせたり、豊かな発想を生かしのびのびと作業させるなど、児童生徒が主体的に学習する過程で身に付いていくものである。従って、次の点から授業を見直し、する必要がある。改善の努力を

 

ア、導入時に、一人一人の児童生徒が課題意識を持ち、見通しを立てて学習できるように配慮する。

イ、指導内容を基礎的・基本的事項に精選し、ゆとりを持って授業が展開できるようにする。

ウ、中心となる指導事項については、十分時間をとって活動を通して身に付けさせるとともに、児童生徒に自己決定の場を与える。

工、指導過程の中に、実施可能な形成的評価を位置付けて実施し、つまずきに対しては、フィードバックをさせる。

オ、学習のまとめを児童生徒自らに行わせるとともに、定着のための時間を確保し、練習や発展問題を通して成就感、達成感や新たな課題意識などを持たせる。

カ、OHP、VTR、コンピュータなど教育機器の活用や多様な学習形態を用い、授業に変化と楽しさを持たせる。

 

3、個に応じた指導の展開

 

本来、学習は児童生徒一人一人に成立し、学習内容の定着は、児童生徒一人一人によって異なることを考えれば、個に応じた学習を基盤として指導を展開し、基礎的・基本的事項を確実に定着させるとともに、個性を生かす指導を展開することが必要である。

児童生徒の個人差は、次の視点からとらえることが大切である。

ア、学習内容の達成度、到達度の差

イ、学習速度の差

ウ、学習スタイルの差

エ、興味関心の差

オ、生活経験の差

 

個人差に応じて指導を展開するためには、次の点に配慮する必要がある。

ア、個人差に応じた教材の開発

イ、一人一人を生かす教師の発問

ウ、児童生徒の多様な考えを引き出す指導

工、主体的な追求を基盤とした学習過程の工夫

オ、一人学習やグループ学習等、多様な学習形態の工夫

カ、教育機器の効果的な活用

以上の工夫や配慮点を指導に生かすとともに、学級全員が、自分や相手の個性に気付き尊重し合う、温い学級集団づくりが基盤となることは言うまでもない。

 

4、社会の変化に対応できる力を育てる指導

 

新学習指導要領改訂の趣旨の一つに国際理解を深め、我が国の文化と伝統を尊重する態度の育成を重視することを掲げている。

社会の変化とは、国際化、情報化に象徴され、これからの教育においても積極的に取り入れていかなければならない内容である。

そのため、国語科、社会科、家庭科技術・家庭科、英語科、道徳、特別活動を中、心として、次の内容に重点をおいて指導を展開する必要がある。

ア、我が国の文化と伝統に対する理解を深める。

イ、諸外国の文化に対する理解を深め、世界と日本とのかかわりに関心をもって、国際社会に生きる日本人としての自覚をもたせる。

ウ、情報に対する判断力を育成するとともに、コンピュータに対する初歩的知識と操作技能を身に付けさせる。

 

四、道徳教育の充実

 

近年の急激な社会の変化は、児童生徒の意識や行動に深い影響を及ぼしている。特に、いじめ、反社会的行為、自殺等の問題行動の原因や背景には、生命尊重の態度や他人に対する思いやりの、心の欠如、自主性に乏しく責任感や社会的規範意識が希薄、また、基本的生活習慣も十分に身に付いていないなどが挙げられる。これらの実状を踏まえ、新しい社会の変化に対応できる

 

 

 


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