教育福島0140号(1989年(H01)07月)-015page
豊かな心をもち、たくましく生きる児童生徒を育てるための「心の教育の充実」が望まれており、道徳教育の在り方について、一層充実と改善に努めることが大切である。
1、道徳教育の課題と改善県内各学校における道徳教育の課題として
ア、学校教育活動全体の中で進める道徳教育の具体的な内容、その場と機会等を明確にすること
イ、道徳の時間の意義とその位置付けをとらえなおすこと
ウ、道徳的実践の指導を、家庭や地域との連携も含めて充実することなどがあり、これらの課題を解決するため、次の点から改善を図る必要がある。
ア、全教師が学校や地域の実態、児童生徒の発達段階や特性を的確にとらえ、学校教育全体の中で、道徳教育の問題点を明らかにして、その改善、充実に努める。
イ、道徳教育全体計画を学校教育目標具現化の観点から、全教師で作成し、学校経営の中に正しく位置付けるように努める。
ウ、道徳の時間の年間指導計画は、全体計画に基づきながら、道徳の時間の指導方針や道徳教育の重点、各学年の指導の重点等がそれぞれ明確になるように工夫する。
エ、道徳の時間は、各教科及び特別活動における道徳教育と密接な関連づけを図りながら、指導内容を構造化重点化して、計画的、発展的な指導の充実に努める。
オ、教師と児童生徒、児童生徒相互の人間関係を深めるとともに、家庭や地域社会との連携を図りながら、日常生活の基本的行動様式をはじめとする道徳的実践の機会の拡大と指導の充実に努める。
カ、道徳の時間の確保に努めるとともに、指導内容や指導方法についての実践と研究を深める。ねらいを明確にし、児童生徒の意識の流れと資料とのかかわりやそれに対する教師の発問など、指導過程を有機的に構成して、児童生徒が、自己理解を深め、望ましく、幅のある道徳性が身に付くように努める。
2、道徳的実践力を培う指導
道徳の時間の指導は、道徳教育の目標実現を目指し、計画的、発展的な指導を通して各教科や特別活動における道徳教育の「補充、深化、統合」を図る場である。それにより、児童生徒の道徳的心情を豊かにし、道徳的判断力を高め、道徳的態度と実践意欲の向上を図るなど、道徳的実践力の育成を目指している。
この道徳的実践力を培うために、次の事項に配慮して指導を進めることが大切である。
ア、全体計画は、道徳教育を有機的、効果的に推進する基盤になるものであり、道徳の時間の指導計画を作成する上でのよりどころである。従って、これらの関連を明確にする。
イ、道徳の時間では、児童生徒や学級、学校の実態に即し、教師自身の持ち味を生かし、発問や資料を吟味し、指導法に改善を加え、望ましい生き方を追求させ、主体的なものの見方、考え方、感じ方を深めさせる指導過程の工夫を図る。
ウ、教師が児童生徒の人間的成長を見守り、よりょく生きようとする努力を評価し勇気づけること。一人一人及び全体の児童生徒の道徳性の傾向の変容を重点目標や指導との兼合いから総合的に見つめていく。
3、道徳的実践の指導
学校の教育活動全体を通じて行われる道徳教育は、学校生活のすべての場で行われ、具体的場面に即し、繰り返し指導することが、その充実をもたらすものである。
日常生活の様々な場面で道徳的価値の選択を迫られたとき、その行為を選択し、行動決定する自己の内面的資質がより望ましい道徳的価値による場合は、それはより高い道徳的実践であるということができる。さらに、道徳的実践は、児童生徒の直接的な行為を伴った日常生活の基本的行動様式をはじめとする日々の言動そのものであるといえる。この日々の言動が望ましい道徳性を身に付けたものになることを目指して行うのが、道徳実践の指導である。
次に、道徳性に支えられた実践の指導一行為の動機づけ)は、一般に次の
ア〜ウによることが多い。
ア、指示的、強制的指導−他律的動機付け。
イ、模倣による指導 親や教師のうしろ姿で学ぶ。
ウ、自発的、主体的学習を促す指導I−自律的動機付け。
人は、常に他律から自律への志向をすることが成長の原則であり、他律的動機に基づくよりも自律的動機に基づいて行為することを求めていることを認識し、児童生徒の発達や個人差に応じながらバランスのとれた指導一他律から自律へが原則)に努めることが大切である。
4、家庭及び地域社会との連携
今日、地域の教育機能の衰退、家庭の教育力の欠如が大きく問題視されている。家庭は基本的な生活習慣を育成する中心的な場であり、児童生徒の道徳的実践、体験の場でもあるので、人間形成上重要な役割をもっている。児童生徒や地域社会の実態を的確にとらえ、学校との連携によって、この役割