教育福島0140号(1989年(H01)07月)-018page
るとともに、児童生徒の友人関係の調整に配慮していくことが大切である。
3、指導に役立つ児童生徒理解の深化
生徒指導の究極の目標は一人一人の児童生徒の自己指導能力を育てることである。
すべての児童生徒は能力、適性、興味・関心がそれぞれ異なり個性的で独自的な存在である。
それゆえ、一人一人の児童生徒の望ましい発達を期して行われる生徒指導においては援助指導の目標はそれぞれ異なり、一人一人の児童生徒の独自の特徴や傾向を十分に把握して援助指導に当たることが必要である。
生徒理解の視点として児童生徒の能力、適性、性格行動、興味・関心、批判、要求、悩み、不安、交友関係、生育歴、家庭環境、地域環境等が考えられるが、特に大切なことは、児童生徒が自分自身や自分を取りまく周囲の状況をどのように受けとめているかである。それは児童生徒自身の周囲の受けとり方はその行動に大きく作用するからである。
生徒指導における児童生徒理解は理解が指導に役立つものであることが大切であり、教師の児童生徒理解の深化により、一人一人の児童生徒の伸長を図る面や援助指導の必要な面を明確にし、一人一人に応じた適切な援助指導を進めることが大切である。
4、個の悩みに応える教育相談
児童生徒は多かれ少なかれ、友人関係や学習等について悩みや不安を持って学校生活を送っていることが多い。また、ささいな悩みを深刻に受けとめて、自己発揮ができずにいる場合も少なくない。
それゆえ、児童生徒の悩みや不安を除去し、児童生徒が十分に自己発揮できるように適切な教育相談を進めることは教師の大切な仕事である。
学校における教育相談には、次のような特質がある。
ア、いつでも気軽に相談できる。
イ、児童生徒の資料が得やすいのですぐ活用でき、有効な手を打てる。
ウ、教師と児童生徒が常に接触しているのでラポートを作りやすい。
エ、家庭や地域の協力が得やすい。
学校においては、これらの教育相談の特質を生かして、計画的に教育相談を進め、一人一人の児童生徒の自己実現のための援助指導を積極的に進めていくことが大切である。
5、生徒指導の機能を生かした授業の展開
児童生徒の自己指導能力を育てるためには、学校の教育活動のすべてにわたり、生徒指導の機能を働かせることが大切である。
中でも、教育課程の多くの部分を占め、教師と児童生徒とのふれ合いの場の最も多い各教科の授業の中に、生徒指導の機能を積極的に作用させていくことが大切である。
生徒指導の機能を働かせる視点として次の三点が大切である。
ア、自己決定の場を与える。
イ、自己存在感を与える。
ウ、人間的なふれあいを基盤とする。
これらの視点を教科、道徳、特別活動の指導の中で意図的・計画的に作用させ児童生徒の自己指導能力の育成を積極的に図っていくことが大切である。
七 学年・学級経営の充実
1、教育目標の具現化と学年・学級経営
教育目標は学校全体の教育が志向すべき指針であるから、各学年・学級経営では次のような視点により教育目標を具現化する必要がある。
ア、教育課程各領域や学年・学級の指導目標、内容のどこに関連するか。
イ、どの生活場面で達成できるか。
ウ、学年・学級の段階からみてどの程度達成することができるか。
エ、学年・学級の実態からみてどこに重点をおかなければならないか。
2、一人一人の児i生徒が生きる学年経営
学年経営を進めるうえで最も大切なことは、同一学年のすべての児童生徒や学年の集団にとって、楽しく充実した学校生活の実現が図られるよう、教師集団が共通して実践できる力量を共有していることである。
また、学年の児童生徒の実態を多面的に把握し、心身の発達段階に応じた課題を明確にしながら、学年共同体としての共通理解に立って、組織的・計画的な援助指導ができる体制を確立しなければならない。
学年経営を効果的に進めるには次の視点に留意し、努力する必要がある。
(1) 学年目標の達成に努める学年経営
学校教育目標の具現化を図るためには、学年の特質を踏まえた具体的な目標を設定し、全学年教師の共通理解のもとに教育実践の内容を明確にする必要がある。そして、各学級担任が学年経営についても共同の責任を負って共通実践に努めることが大切である。
(2) 学校経営の中で、有効に働く学年経営
学年経営が、学校経営の中で有効に働くためには、学年の指導体制が機能的に組織されていなければならない。
具体的には、学年目標・方針をしっかり樹立し、諸計画の立案、日常生活