教育福島0140号(1989年(H01)07月)-049page
博物館ノート
日本にいた象ステゴロフォドンゾウ
ゾウの仲間は脊椎動物の中の長鼻目というグループに属していますが、現在、地球上で見ることができる長鼻目はアフリカゾウとインドゾウの二種類だけです。しかし、ゾウの化石の研究からは、過去の地球上には、三百種類以上ものゾウの仲間が現われたことがわかります。
ステゴロフォドンゾウもそのような絶滅したゾウの仲間の一つで、今から一千万年以上も前、アフリカからユーラシアにかけて広く分布していました。このゾウの化石は日本でも多く見つかっており、本県でもいわき市で立派な下顎骨の化石が発見されています。
ステゴロフォドンゾウは、ゾウの進化系列上ではその中ごろに位置し、今日のゾウとは異なった原始的な形質が多く見られます。大きさはインドゾウに比べてもだいぶ小さく、鼻もあまり長くなかったようです。また、下顎にもキバがありました。ゾウの歯は、水平交換といって、古くなった歯が歯ぐきの前の力へせり出してぬけ落ち、後ろから新しい歯が現われる、という独特の生え替わり方をしますが、そのしくみも今日のゾウとは少し異なっていたようです。
下段の図は、ステゴロフォドンゾウの生活ぶりを推定して描いた図(古生態復元図)です。ゾウの主食は樹木の若芽や果実ですから、図のように広葉樹林のある温和な環境下で生活していたと考えられます。
いわき市産のステゴロフォドンゾウ下顎骨
宮城県柴田町産のステゴロフォドンゾウ上顎骨(写真は複製品、博物館展示資料)
ステゴロフォドンゾウ古生態復元図