教育福島0141号(1989年(H01)09月)-031page

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二十二ページより

 

心身障害児を可能な限り社会参加できるよう導くとき、心身に障害のない児童生徒と共に活動したり生活したりする場を設けることは、心身障害児の経験を広め、社会性を養い、好ましい人間関係を育てるうえで、きわめて有意義な点も見逃せません。また、心身に障害のない児童生徒が心身障害児と活動を共にし互いに接し合うことは、自分たちと心身障害児のなかに、多くの共通点を見いだし仲間意識を育むことになります。更に、心身障害児の障害を克服する意欲にふれて自分の生活の姿勢や学習の態度を反省したり、心身障害児はもとより自分をとりまく幼い子ども、お年寄りなど地域社会を構成しているすべての人々に対して思いやりの気持ちを育てる良い機会にもなります。

 

三、交流教育の実施に当たって

 

交流教育そのものは、従来のいわゆる分離教育から起こる教育上及び児童生徒の発達上の弊害に対する反省から出発したものですから、その実施に当たっては、そうした弊害を解消するための条件を満たすものでなければなりません。だからといって児童生徒への個別的配慮をおろそかにした無雑作で無理な交流は慎まなければなりません。盲・聾・養護学校の児童生徒がその学校で何が欠けているか、どんな弊害があらわれているかという点について十分な考察がぜひ必要です。この検討を欠くと、交流教育は、人間関係への悪影響となって表れたり、融合性の進展を阻害してしまったりする場合も出てきます。少なくとも、交流教育で心身障害児に劣等感を助長させたり、心身に障害のない児童生徒が誤った優越感をもって接することのないよう十分注意しなければなりません。

社会参加、自立を目指す盲・聾・養護学校の児童生徒がその発達過程において必要としていることは何か、そして、また、心身に障害のない児童生徒が心身障害児たちと接することによって何を得ることができるかの考察を深めておかないと、単なる行事の消化に終わってしまい、教育効果は何も期待できないでしょう。

 

四、交流教育の現状

 

本年度の文部省の指定校及び協力校と県教育委員会の指定校は表2に示したとおりです。本県の盲・聾・養護学校では、その他にも様々な形態で独自に交流教育を実践しています。

県立一市立を含む一の盲・聾・養護学校一本・分校合わせて)二十二校のうち十八校でなんらかの形で交流を行っており、十四校が教育課程に位置付けてそれを実践しています。中には、十年以上も継続している学校が五校もあり、息の長い地についた交流教育を実践しています。

以下に、本県で行われている交流教育の概略を紹介します。

(1) 幼稚部での交流教育

水遊びやぶどう狩り、いも掘り、お遊戯会などを通して、幼児同士が自然な形で感動を共有することができるように配慮された交流教育を実践しています。

(2) 小学校での交流教育.

運動会や学習発表会、水泳教室、遠足などの学校行事を中心に交流を行い、それぞれの地域の特徴を生かした工夫がなされています。週一回のクラブ活動を相手校に出かけ九年間も継続している学校もあります。

(3) 中学部での交流教育

生徒会活動が交流教育の実践に大きな役割を果たすようになり、行事の企画、運営にと積極的な活動を展開しています。同じ養護学校の小学部の子どもも一緒にグループ編成をして様々なゲームを工夫するなどして楽しい一日を過ごす学校もあります。

(4) 高等部での交流教育

生徒会活動の他に、高等学校のJRC活動が加わり、より深みのある活動を展開しています。また、県高等学校文化連盟に加盟し、作品の発表等を行い幅広い交流活動を実践している学校もあります。

(5) 地域の人々との交流

十名足らずの小さな分校にそれぞれの家族が十−二十人もの親類や地域の人々を誘って集まり百人以上で運動会を実施している学校、交流相手校へ出かける際に町のバス利用の協力が得られる学校などがあります。

また、郵便友の会に参加したり、市内のデパートで作品展を開くなど、学校と地域の人々が様々な形で交流を行っている場合もあります。

(6) その他の交流教育

小体連、中体連、高体連に加盟し、障害のない児童生徒と共に汗を流し技を競い合っての交流教育も実践しています。

 

近くの保育園児と交流水あそびを楽しむ

近くの保育園児と交流水あそびを楽しむ

 

 

 


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