教育福島0141号(1989年(H01)09月)-041page

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教育・一口メモ

 

新高等学校学習指導要領から

 

高等学校教育課

 

「人間としての在り方生き方に関する教育」

 

平成元年三月告示された新高等学校学習指導要領は、教育課程審議会答申において示された四つのねらいを基本的に踏襲している。ねらいの一つである「豊かな心をもち、たくましく生きる人間の育成を図る」という観点を踏まえ、今回の改訂では、小・中・高等学校を通じて道徳教育の充実ということが強調されている。特に、高等学校においては、人間としての在り方生き方に関する教育を通して道徳教育の充実を図ることとしている。

高校生ともなると、人間としての在り方や生き方を求める中で自己探究と自己実現に努め、国家・社会の一員としての自覚に基づき行為することが期待できる。このような発達段階を考慮し、人間として調和のとれた発達を図りながら、自らの行動を選択、決定していくことのできる主体生の育成を目指す教育が、人間としての在り方生き方に関する教育である。

人間としての在り方生き方に関する教育の具体的内容として次のようなことがあげられている。1)人生観、世界観、価値観など内面的な資質を育てる内容2)実践的な行動力を認識させる内容3)悩みの克服に関する内容4)良き社会人、家庭人としての役割と責任を認識させる内容5)多様な価値観を認めて相互に共存する態度を育てる内容6)主体的に進路を選択する能力を育てる内容7)健康で活力のある生活と安全の保持に努める態度を育てる内容8)美意識の涵養と豊かな青操を育てる内容等。

人間としての在り方生き方に関する教育は、高等学校の教育活動全体を通じて行われることになるが、現行では中核となるべき教科や領域における位置づけが必ずしも十分ではないという反省を踏まえ、特別活動におけるホームルーム活動や新しく設けられる公民科における「現代社会」、「倫理」が中核として位置づけられた。このほか、国語、外国語の教材選定の観点として例えば、「生活や人生について考えを深め、人間性を豊かにし、たくましく生きる意志を培うのに役立つこと」等を取り上げるとともに、学校行事やクラブ活動においては、勤労や奉仕にかかわる体験的な学習の指導を重視している。

このように、人間としての在り方生き方に関する教育とは、狭義の道徳性の育成を目指すものではなく、生徒が日常直面し、現在及び将来にかかわる現実的な諸問題への取り組みを通じて社会性や自主的実践的態度を養うとともに、究極的には、生徒が物事を主体的に選択し実行できる自己教育力の育成を目指すものである。

 

「社会科の再編成」

 

「社会科の再編成」

 

のポイントの一つである。再編成の必要性についての主な理由は次のとおり。

 

社会科を地理歴史科及び公民科に再編成することは、今回の改訂の最大のポイントの一つである。再編成の必要性についての主な理由は次のとおり。

1)国際的な資質  国際社会に主体的に生きる日本人として必要な、世界的視野の下に日本を比較文化的視点から相対化して見ることのできる資質を育成する必要があること。

2)公民的な資質  国家・社会の構成員としての自覚を持ち、民主的、平和的な国家・社会の進展に主体的に寄与できる資質−−を育成する必要があること。

3)中学校までの社会科学習の基礎の上に、生徒の発達段階に応じた専門性、系統性のある教育を実施する必要があるとともに、高等学校教育において育成すべき国際的な資質と公民的な資質とをバランスよく身につけさせることのできる教科構成とする必要があること。

以上に加えて、教員養成における免許についても、地理歴史、公民の二教科の免許に改めることにより、免許取得に必要な専門科目が充実し、その結果、より専門性の高い教育の実施が期待できること等があげられる。

なお、地理歴史科では世界史が必修となる。これは、中学校までの段階で「日本史」及び「地理」は系統的に学習しているのに対し、「世界史」は中学校の日本史学習において、日本の歴史の流れの背景として関連部分の学習を行うだけにとどまっているという状況にあるため、国際化への対応という時代的要請に応えるとともに、教育内容の系統生、一貫性、及び生徒の発達段階を考慮したものである。

 

 

 


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