教育福島0141号(1989年(H01)09月)-044page

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養護教育センター通信

 

心身障害児の教育相談の基本的あり方

障害をのりこえ、学校生活への適応を図る

 

一、はじめに

当養護教育センターは、昭和六十一年四月開設以来、事業の一つとして心身障害児に関する教育相談を実施してきました。その実施状況を延件数でみると、昭和六十一年度千二百六十九件昭和六十二年度千四百九十九件、昭和六十三年度二千六十一件という実績でした。年々増えてきた心身障害児の教育相談について、ここにその概要にふれながら、その基本的な在り方について述べます。

 

二、心身障害児の教育相談

当養護教育センターは、次のような目的を持って教育相談を行っています。

心身に障害をもつ就学前幼児、学齢児童生徒に関する教育相談機関として障害の種類や程度に応じた適切な教育措置がとられるよう、専門的かつ総合的観点から相談者に対して、1)相談活動を通して、悩みや不安の解消を図り子どもとその関係者の生活創造への援助を行う。2)相談活動に当たっては、必要に応じて専門機関との連携を密接にし、心身障害児教育の内容の充実を図る。3)適切な就学指導が推進できるよう側面的援助を行う。

なお、相談の対象は、心身に障害が認められるか、またはその疑いのある幼児、児童生徒であり、障害の種類は次のとおりです。○視覚障害(目の不自由な子ども)○聴覚障害(耳の不自由な子ども)〇精神薄弱(知恵遅れの子ども)○肢体不自由(手足の不自由な子ども)○病弱・身体虚弱(病気等でからだの弱い子ども)○言語障害(ことばの不自由な子ども)○青緒障害(情緒に障害のある子ども)○重複障害(障害が重く、幼稚園・保育所に通うこと等難しい子ども)

このように心身にさまざまな障害がある乳幼児、児童生徒の一人一人の発達や生活上の諸問題について、援助するのが心身障害児の教育相談ですが、基本的には、子ども自身の問題が中心になります。しかし、その問題の解決に当たる取り組みを進めると、親や教師が、子どもの育て方や発達を促す具体的な手だてについて助言指導を受けたいという要請が多く出されるため必然的に親や教師をも含めての教育相談になります。

 

三、子どもとの関係

そもそも教育相談は、学校(幼稚園・保育所を含む。以下略)という場、教育という活動に生かされるものであるため、病院や診療所を訪ね、そこで受ける処置とは基本的に異なるものといえます。つまり、教育相談の目標はあくまでも学校や教育の場を中心にすえて、学校生活への適応を図ることです。したがって、教育相談のねらいは、次のような四点に要約されます。1)一人一人の子どもの障害の状況、それと関連する学校・社会・家庭生活上の問題について、その解決を図るため、指導援助を行う。2)個別・集団活動や対人関係を通して望ましいパーソナリティの育成を図る。3)一人一人の資質の理解と適性の発見、開発を目指し、将来必要とされる社会生活への適応のための準備をする。4)子どもの教育指導をめぐって、本人のみならず、親、教師、学校管理者、その他に対し、問題解決の具体的指針を助言指導する。

以上のようなことから、教育相談は、障害の一部や症状を癒したり、治療したりするのではなく、その個人の生活全般にわたる有効な指導援助を目指すことが大切であるといえます。

次に、教育相談においては、教育的判断・指導・助言がなされること、更に、学校教育と不即不離の関係にあるために学校を通しての積極的な教育指導が可能であること等の教育相談の特質があります。そのことから、教育相談の第一歩は、適切な子ども理解にあります。そこで、子ども理解について、1)どんな領域を、2)どんな行動的特徴を、3)どんな方法で行うか、列挙すると次のように要約されます。

(1) 領域

1)障害の状態 2)発達の状況 3)知的能力 4)学業達成度 5)生格・行動の特徴 6)対人関係 7)適性、進路 8)価値感 9)環境的要因

(2) 行動的特徴

1)障害種別、疾病、欠損 2)異常性格、精神病質 3)反社会的行動・性格 4)非社会的行動・生格 5)優れた資質の表出行動 6)習癖、習慣

(3) 理解の方法

1)観察法(自然的、実験的) 2)面接法(個別−子ども・親・教師、相互のかかわり) 3)テスト法(知能生格、学業、適性、対人関係、行動) 4)調査法(障害の種類・程度、生格・行動、環境) 5)業績表出法(学業、生格、適性、運動)

以上のように列挙したそれぞれの項目は、相互に関係し合っているため、明確に分けられないこともあるし、またある項目は特に重視し、他はほとん

 

 

 


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