教育福島0141号(1989年(H01)09月)-045page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

ど無視されがちな項目もあります。しかし、教育相談では、ある特別な面のみが評価の対象になり、他が等閑視されるあまり、場当たりの理解にならないようにすること、多面的・相補的にしかも”人間性〃を重視したかかわりをすること等による子ども理解に心掛ける必要があります。

 

四、親との関係

教育相談における親への援助について、相談を依頼する動機との関連で具体的に述べることにします。なお、このことはある面で教師にも通じることでもあります。

親がどのような動機で「相談」を依頼するかについてみると、おおよそ次の三つになります。

1)親自身が子どもの発達の遅れや、行動上の問題に気付くか、あるいは保健所や医療機関等で実施される乳幼児健康診査等で障害を指摘されて、その後の養育や治療の方法について、より専門的な指導を受けたいという気持ちになっている。

この場合、一般的に親が子どもの発達上の遅れや、行動上の歪みについて気付き、その原因や障害の実態について医学的で明確な診断と治療及び日常の生活の指導を専門機関に求めることになります。

また、乳幼児の健康診査等で障害の疑いや、発育上の問題を指摘された場合等では、むしろ親は、半信半疑の気持ちで不安に駆られて、精神的にもかなり動揺し、緊張が高まっています。親の側からすると、子どもの養育上、家庭ではどうすることもできない子ども自身がもつさま、ざまな問題について、いろいろと専門的な立場から相談にのってもらいたいという気持ちでいっぱいである状況ともいえます。したがってこの場合、障害の早期発見という観点にたてば、相談内容について親からの訴えを適切に整理して、子どもの行動の実態や障害の程度並びに発達上の歪み等について的確に把握し、親に対して納得できる指導援助を行うことです。また、親の精神的な緊張を幾分でも柔らげ、その後の養育指導について共に知恵を出し合える機会を積極的に準備して相談する必要があります。

2)既にいくつかの医療や保健衛生、福祉、教育等の専門機関の指導援助を受けている。行き詰まったり、他者からの指摘を受けて、更に新たな観点から医学的診断や発達の評価に基づく指導援助を希望している。

この場合、親の精神的な緊張はそれほど緊迫していません。しかし、既に何らかの専門的な指導を受けてはいるが、現実に子どもの障害の状況や発達上の歪みに対して、十分な治療や教育になっていないという判断、あるいは障害そのものの実態をよく理解できないまま戸惑っているという背景があるといえます。そのため親は、医学的な再診か、新たな指導方法や家庭での養育の仕方について助言を求めてきます。したがって、このような状況のもとでは、すでに何らかの形で、治療や指導を受けていることを考慮して、子どもの行動について、親と共に、丁寧に見直しをして、,障害の内容について適切な理解をしたうえで、指導援助を進めていきます。この際、必要に応じて、それまで治療や指導を受けてきた専門機関との連携プレイを行うこともあります。

3)子どもの生活年齢の節目ごとに生じる入園、就学、学習、進路等のある特定の時点での問題解決のため相談する。

この場合、相談内容がかなり明確になっていることが特色であり、親の側でもある程度、問題の解決策について考えを用意しています。したがって、親の緊張感について心配はそれほどせずに、子どもを取り巻くさま、ざまな課題について具体的な方向付けを徐々に行うことになります。教育相談の方法としては、一つ一つ当面の課題について吟味しながら、子どもの発達段階と生活条件を的確に把握したうえで、適切な処遇を考えていきます。特に受け入れて指導してもらう施設や指導者との念入りな連絡協議は欠かせないものです。

以上のように、教育相談を進めるうえで、親と相談担当者は、最終的には一人の障害児を育てていくための。パートナーとしての関係にまで発展することが望まれます。

なお、親の精神的な状態は、絶えず安定を欠き、感情の起状をありのままに、心の乱れをあらわに表出しているのが現実であるといえます。障害児をもったことに対する自責の念、子どもの障害を一応是認しつつも「自己のみになぜ不幸が」との思い悩み、子どもの障害の治療・養育への焦り、専門機関の指導への不満、あるいは、親の高齢化や先に逝くことから、子どもの将来に対する不安にさらされています。したがって、相談担当者は、親の精神的な負担や悩みについて、まず良き理解者となる努力が必要です。

 

五、おわりに

障害児の教育相談に取り組んでいく場合、まず考えなければならないことは、子どもの障害の内容をよく理解することです。そのため子どもの日常生活での行動面について、観察や評価を行います。同時に子どもの置かれている生活環境、発達の段階について的確に判断する必要があります。そのためにも親からの情報は欠かせません。更に親がどのような気持ち、どのような悩みや不安を持っているかを洞察し、親の精神的な安定を図るような援助の仕組みを考えることも必要です。

心身障害児の教育相談は、子どもをめぐるさま、ざまな問題に対して、その解決に向かって、親やその他の関係者と共に立ち向かうという基本姿勢で臨むことが重要であるといえます。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。