教育福島0142号(1989年(H01)10月)-030page
「趣味」を生かす
渡 辺 金 作
本校に四月赴任し、広報委員会のメンバーの一人になった。すぐ委員会が開かれ、委員長さんから、「先生、これお願いします」と、手渡された茶封筒を開けてみると、プロフィールを書く欄があり、中に「趣味」について書いて下さいと、書かれてあった。
これには、「ウーン」と、うならずにはいられなかった。何を書くか迷ってしまった。迷うほど「趣味」が豊富にあるということではない。以前はいつも「趣味」は「書道」と書いていた。
それは小学校から大学時代にかけて「書」に親しんできたからであって、特に大学在学中、「毎日書道展」に入賞したことの喜びが、そう自分に書かせてきたように思われる。
今回は、考え迷った末、「サッカー」と書いた。実は、わたしは、人も驚くほどの運動音痴で、「サッカー」を「趣味」と書ける程ではない。
しかし、「サッカー」が好きになった。その「サッカー」との出会いは、福島市内のS校に赴任した時である。S校は、市内でも屈指のスポーツの盛んな学校であった。当時、サッカー部の顧問の先生は、体育の先生であったが、わたしが「若い」という理由で、サッカー部を担当することになった。
翌日になって、このサッカー部が、前年度には県大会で三位に入ったことを同僚から聞かされ、足がすくんだ。運動のダメなわたしに、このサッカー部を率いていく力があるのだろうか。悩みつづけたが、やるしがなかった。
毎日、暇を見つけては、サッカーに関する本を読んだ。
しかし、不安が先だち、頭にはそう入らなかった。ルールも知らないままにグランドに立ち、気合だけは掛けっづけた。
幸運にも、その年、県大会は前年に引き続き三位になった。翌年も、子どもたちと父兄の方々の熱い声援で三位に入り、顧問を受け継いで、二年連続上位入賞を果たせた。
S校を去る日、子どもたちと、額と額を合わせ、別れがつらくて泣いた。
文集に、「先生は、サッカーを知らないようで、いつも本を手にし、サッカーを覚えようと頑張っている。その姿をみて、自分たちも頑張った。」と、一人の生徒が書いていた。
サッカーができないことを見抜かれたことより、自分のその姿を見て、頑張ってくれた生徒がいたことが、うれしかった。
現任校で、父兄の方に、「サッカーをやっていたんですか」と聞かれるとき、「やっていません」と答えても、信じてくれなかった。子どもたちも、まじめな顔をして、わたしが話すことばを、「はい」、「はい」と、大きな声を出して聞いてくれる。そのたびに、テレくさい気持ちがしてくる。「趣味」サッカーを生かしつづけたい。
(双葉町立双葉中学校教諭)
県立図書館からのお知らせ
◆第二回ふるさとふくしま講演会
≪ふくしまのざっと昔≫
「おはなしおばさん」として、全国各地で子どもたちに昔話を語り続けている、横山幸子さんにおいでいただき、昔話との出会いについてお話いただきます。
また、実際に心に残る昔話のいくつかを語っていただきます。
くわしくは次のとおりです。どうぞ皆さん、昔話のなつかしい時間をお過ごしください。
・と き 平成元年十一月五日(日)
午後二時〜三時
.ところ 福島県立図書館 講堂
※ 入場は無料です。
◆読書活動指導者養成講座
講師に、調布市立図書館の黒沢克朗氏をお迎えして、「子どもと本の出会い」というテーマで、講義と読み聞かせなどの実践を行います。
理論と実践の両面を構えた図書館員として、高い評価を受けている黒沢氏のお話をこの機会にぜひどうぞ。
・と き 平成元年十一月二十一日(火)
午前十時三十分〜午後三時
・ところ 福島県立図書館 講堂
※ 参加は無料です。十一月十日(火)まで、電話等により申し込んでください。
・申込先 福島県立図書館 振興課
◆九六〇 福島市森合
字西養山一番地
◆ 〇二四五−三五−三二一八