教育福島0142号(1989年(H01)10月)-033page

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ること。三番目の「座法(アーサナ)」は体操で、主なものでも二百種類以上あります。四番目の「調気法一呼吸法)」はプラーナ(気=生命エネルギー)を活性化するもので六十数種類ものやり方があります。五番目の「制感」は、感覚器官の意識的コントロールによる外部集中で、ここまでの段階をヨーガでは「外部門」と呼んでおります。

続いて、内部集中である「凝念」を経て、禅の語源でもあります「静慮(ディヤーナ=禅)」、「三昧(解説=悟り)」という深い瞑想により、非常に澄んだ高い精神的境地に至ると言われております。この後半の三つの段階を「内部門=綜制」と申しますが、本来のヨーガとはわが国で通常考えられておりますような美容法や健康法のひとつなどといった小さなものではなく、たえず揺れ動くわれわれの心と体を調和させ、自己の持つ本来的な能力を十分に輝き出させるところに真の目的を持つものであります。

さらに理解を深めていただくために図の下にあります五重円をごらん下さい。これはヨーガの哲学で考えられております人間の構造であります。ヨーガの行者たちは昔から人間をこのように五つの鞘(コーシャ)として考えていたわけであります。ですから一番外側の「肉体の鞘」を強健なものにするために何百にも及ぶ体操一行法の三段目)が考えられたわけです。そして、その内側の「気の鞘」(西洋哲学では、もちろんこんなことは申しませんし、解剖したって目には見えませんが)を活性化するためには、行法の四段階目に達している「調気法」が数多く考案されております。

このようにヨーガ哲学における人間観とヨーガの行法体系は、見事なまでに一致しているわけでございます。先に述べました健康のための六つのポイントのすべてがヨーガの中に含まれておりますこと、とりわけ、運動、呼吸、心などの調え方が、これほど綿密に組み立てられたものを私は他に存じません。

私がヨーガの行法体系の中の三段階目にすぎない体操を、それもはじめの頃は、ごく簡単なものしか行わなかったにも関わらず、確かに私は選手時代と比べても、心身とも健康になっていきました。そしてヨーガの魅力にとりつかれた私は、調気法や瞑想などのさらに高い段階の行法を勉強してみたいと思うようになっておりました。

そうした矢先、私の想いに応えてくれる第二のヨーガの師、木村慧心先生に偶然にも出会うことになったのです。木村先生はヒマラヤで長い間修業を積.まれ、若くして世界でも数少ないラージャ・ヨーガ・アチャルヤ(導師)となられた方であります。.ラージャ・ヨーガとは、別名、王者のヨーガと言われ、先のヨーガの八部門を総合的に修するとともに、とりわけ瞑想を重視するヨーガであります。

先生の指導して下さる百数十種にも及ぶアーサナ、六十種にものぼる調気法、さらには非常に細かな心理的操作をともなう瞑想などを行じていくにつれ、私のヨーガ観はさらに大きく変化してまいりました。そしてそこにこそ単なる保健・衛生的な応用にとどまらない、チャンピオンスポーツやあるいは厳しいビジネス場面など、様々な人々やケースに応じてヨーガの応用可能性が確信されるに至りたのであります。

現在、私がこうして皆様にいくらかなりともお話し申し上げることができるのも、佐保田、木村両先生の暖かい御指導によるものと深く感謝いたしております。両先生の御指導によって、私にも少し皆様のお役に立てるような力がついたのか、昨年から多くのトップスポーツマンのお手伝いを、とりわけヨーガを応用したメンタルトレーニングのアドバイスをさせていただいております。

最後に、ヨーガは徹底した実践行であること、つまり、たとえ五分でも結構ですから、毎日毎日繰り返し行なってこそはじめて、ヨーガによるさまざまな恩恵が、皆様方の心身にもたらされるものであるということを申し添えまして、本日の私のお話しを終りにさせていただきたいと思います。

 

資料 実技「ヨーガ」の内容

 

1.体操(アーサナ)

簡易体操・手足の基本体操・ライオンの体位

内臓引き上げの体位(ウデイヤーナバンダ)

完全弛緩の体位(シャノーアーサナ)

2.調気法(プラーナヤーマ)

Anuloma Viloma(アヌロマヴィロマ)

1.右から吸って、右から吐く。左から吸って、左から吐く(10回)

2.右から吸って、左から吐く。左から吸って、右から吐く(10回)

右手親指で鼻の右側を、残りの措で鼻の左側を押さえる。

吹くときに腹筋を緊張させ、お腹をへこめる。(0.5、又は1秒に1回位の速さ)

効果:鼻腔内と肺の不純物が取り除かれる。また、風や鼻炎の原因になっている鼻腔内の皮膚や粘膜も取り除かれる。

Aguni Prasarana(アグニプラサーラナ)

両鼻から吸って、両鼻から吐く。

横隔膜を上(吐)下(吸)させる。0.5、又は1秒に1回位の速さ)。1分間

効果:消化吸収作用を促進させ、腹部の余分な脂肪を取ってくれる。

Nadi Shodhan(ナーディーソダン)

右から吸って、左から吐く。左から吸って、右から吐く(微細呼吸)

右手の人指指と中指を曲げ、親指で鼻の右側を、残りの指で鼻の左側を押さえる。(吸気と吐気の割合は1:2)2往復

効果:動勢脈が浄化され、呼吸に伴って血行が長くなる。また、精神の集中度も高まり、呼吸も長く、ゆっくり続けられるようなる。

Dirgha Shwasa Prashwase(ディールガシュワーサプラシュワーサ)両鼻から大きく吸って(完全呼吸)、両鼻から強く吐く。(10回)効果:鼻や喉、肺が浄化され、また、胃と肺臓の働きが強化されることで、食物の消化吸収作用が促准される。また、身体全体に生気が溢れるようになる。

3 瞑想についての説明と毎日のプログラムの立て方

 

 

 


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