教育福島0142号(1989年(H01)10月)-042page
教育センターから
事例を通した教育相談の進め方に関する研究
予防的な指導援助
−教育相談部 第一年次・実践研究−
一、研究のねらい
問題行動の発生までには相当の潜在期間が存在する。そのため、顕在化した時点での問題行動は多くの要因が複雑に関係し合っており、指導援助に相当のエネルギーを必要とする。また、指導援助がなされても、問題の改善や解決が困難な場合もある。
そこで、児童生徒を問題行動にまで至らせないためには、問題行動につながる各要因が結びつく前に、その要因の改善や解決を図っていく「予防的な指導援助」が必要となる。
本研究は、問題行動を未然に防ぐ予防的な指導援助の確立を目指して行うものである。
第一年次(昭和六十三年度)は、予防的な指導援助についてのとらえ方を明らかにし、各種の事例および各種調査から予防的な指導援助の要点と基本的対応を明らかにすることにした。
図1 予防的指導援助の対象児
二、「予防的な指導援助」とは
問題行動を起こすことが予測されると診断された児童生徒、または、現在の行為や行動が問題行動に向かって増幅されつつあると診断された児童生徒に対して、問題行動につながる素因や誘因を改善、解決または除去することである。この場合の研究対象児は、図1のようなとらえ方で研究を進めた。
また、すべての児童生徒に対しても問題行動を起こさないための意識づけを図り、問題行動の発生を予防する指導援助としてとらえることにした。
三、予防的な指導援助の現状と課題
予防的な指導援助の要点と基本的対応を把握するため、児童生徒(三千五百六十九人)と教師(九百三十六人)を対象にアンケート調査を実施し、現状を把握した上で課題をまとめた。下図は児童生徒へのアンケート結果の一部である。(図2・図3参照)
これら「問題行動につながる気持ち」に先生が気付くことが予防的指導援助の第一歩である。
その他、つぎのような内容で調査を行った。
・ 問題行動につながる気持ちの背景
・ 問題行動を起こすと予想した根拠
・ 指導援助計画の作成
・ 児童生徒からみて効果のある指導援助内容
・ 教師が実際に行った本人への指導援助内容
・ 教師が実際に行った家庭への指導援助内容
・ 教師が実際に行った学級全体への指導援助内容
・ 児童生徒が教師に望む対応
・ 教師が必要と考える指導援助
・ その他.
図2 アンケート項目
四、予防的な指導援助の要点と基本的な対応
前述の調査から、予防的な指導援助に必要と思われる内容が表1および表2のように明らかになった。
図3 アンケート結果(数字は1.0セント)