教育福島0143号(1989年(H01)11月)-015page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

教材の展開については、画面例(資料4参照)を見ればわかるので省略する。

なお、使用したCAIソフトは、三年前に福島商業高校で開発されたものに手を加えたものである。

評価と課題

パソコン使用組と不使用組の成績の比較はしてないが、「パソコン使用の数学」という目新しさもあり、また自分でキーを押さなければ、それも正答でなければ次に進めないので画面での問いかけや説明に真剣に取り組んだようである。そのためか、質問も多く、一人の指導者で対応するのは大変で、二時間は複数の指導者で当たった。

今回は、初めてでもあり、教科書とノートのみを持たせて、授業を行ったが教科書の内容と画面での表現が異っていると、板書されたものをノートに写すかのように、画面すべてをノートしょうとする生徒がかなりおり、画面に沿った書き込み式のプリント教材を準備すべきであった。

また、CAIによる授業は、生徒の理解の速さに応じて、どんどん進めるようになっているので個人差に応じた指導には役立つが、いっかは、一斉授業にもどることを考えれば、前述の書き込み式のプリントの中に全員がやるべき問題、省略可能問題等を適宜配置しておき、最後に一斉授業でまとめる際には、同一進度になっているのが望ましい。

以上数学の指導上考えられるものを述べたが、この他に考えられるものとして、極限(例えば微分係数と接線の関係)や空間図形を画面で表示することなどがあると思う。かなりの分野で(特に図形を表示するとき等)有効であり、この他にもアイディア次第で色々作れると思う。

 

二、理科におけるパソコン利用

 

科学の原理や法則は、理論の発展と実験研究の成果とがあいまって推論され、実証されてきた。

それら理論と実験を含む科学の学習において、実験を行う過程は非常に重要な意味をもっている。

しかしながら、生徒の大多数が、実験に対する予備知識をほとんど持たずに実験台に向かっている現状がある。授業を開始してからはじめて説明を聞き実験を始めるのでは、なかなか成功しないだろう。

そこでパソコンを用いて、CRT画面上で事象をシミュレートさせる方法を工夫してみた。つまり視覚的に実験学習をすることで科学的現象の魅力によって意欲を起こさせ、実験内容を把握させた上で、本実験を実施することを考えた。また、実験結果のデータ処理にパソコンを用いて、複雑な計算を簡略化し、瞬時にCRT画面上にグラフを表示し、班だけでなく、クラス全体のデータを元に一つの規則性、法則性などを導き出すことなどにも利用できる。

本校にあるパソコンは教室を移動することができないため、実験室での利用は不可能ではあるが、現在、計画中のプログラムを紹介したい。

 

1、結晶構造のステレオ化

固体として存在する物質は結晶物質と非晶質物質に大別することができる。結晶では、イオンまたは原子、分子が空間的に規則正しく配列されており、その空間的繰返しの基本パターンによっていろいろな結晶に分類される。その結晶構造を単に模型を用いて説明するのではなく、パソコンのグラフィック機能を利用して、立体的に表現できないだろうか。ステレオ・グラフィクス・サブールチーンで三次元座標値(x、y、z)を右目像座標、左目座像に変換すれば可能であるはずである。これだけでは、CRT画面上で、像がだぶついて表われるので、赤青めがねを使えば、ステレオ・グラフィックになる。それだけでは、おもしろ味に欠けるので、異なる角度から同じ結晶を見られるようにすれば、生徒の興味、関心が高まるだろう。

 

2、有機化合物の分類

前述した結晶構造のステレオ化の応用例になるが、有機化合物は炭素を主とする化合物で、その分類法は性質を決める原子または原子団によって分類される。そのことを利用して、官能基↓炭素骨格というように分類された有機化合物をCRT画面上に立体構造がわかりやすいように、分子構造を表示する。そうすることによって、炭素数の増加と、有機化合物の融点・沸点の変化との関係などがわかる。

 

三、今後の展望と課題

 

以上のように実践したものと実践予定のものを紹介したが、パソコンを使うときの問題点は、プログラムを開発するのに要する労力の大きさである。何週間もかかって作った。プログラムを授業で使うとほんの数時間で終わってしまうのである。このような教材の開発は本当に教員の情熟がなければ実現が難しい。それを解決するには、長い年月をかけていろいろな教材を開発し保存しておいたり、他校との情報交換を密にして、ソフトをお互いに使えるようにすることである。このように長期間にわたって広い範囲の先生方で開発し、そのアイディアを交換し合いながら協同作業のような形で教材を増やしていくことが必要ではないかと思う。また、コンピュータの活用はとかく数学や理科が中心になりがちであるが、その他の教科も含めた多くの教員が身近にあるコンピュータに親しみ、研修会等によってコンピュータの活用能力を高めていく努力をすることが必要だと思う。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。