教育福島0143号(1989年(H01)11月)-031page

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三、発掘技術の研修

 

県教育委員会では、埋蔵文化財の発掘調査体制の強化と保護の徹底を図るため、調査員の専門的知識と技術の向上に努め、多種の研修会への積極的な参加を呼びかけている。

本年度は、奈良国立文化財研究所埋蔵文化財センター主催の次の研修会に参加をしている。

一般課程三名、土師器・須恵器調査課程二名、保存科学課程二名、遺跡環境課程一名、なお、縄文土器調査・弥生土器調査・生物環境の各課程に計五名の参加を予定している。

また、県教育委員会主催の第十七回発掘技術者講習会は、福島市を会場に二十名の受講者があり、考古学に関する基本的な知識と技術について熱心に受講した。

 

四、開発に伴う発掘調査

 

本年度、県教育委員会で実施している分布調査は、国営農地開発事業の母畑地区・矢吹地区、東北横断自動車道十次区間(郡山市〜小野町)、福島空港関連事業の試掘調査である。

遺跡は、現状のままで保存するのが最善であるが、種々の開発事業によって保存不可能な遺跡も少なくない。このような遺跡の全容を記録に保存するための発掘調査を、母畑地区、矢吹地区、会津農水事業、東北横断自動車道、三春ダム、原町火力発電所、相馬開発、真野ダム、福島空港関連などについて実施し、あわせて史跡指定調査関和久上町遺跡について実施した。

また、市町村教育委員会においても分布調査、発掘調査を実施し、多くの成果を得た。それらの主なものは次のとおりである。

(一) 東北横断自動車道関連遺跡

本年度は、郡山〜会津坂下間で十三の遺跡が調査された。法正尻遺跡は昨年度からの継続調査で本年度は一万二千平方川を調査し、計二万千平方泌の調査となった。本年は、住居跡六十四棟、土坑二百四十六基と多数の土器・石器を発見した。土坑には、一つの穴から十三個もの土器を出土した例があり、食料を貯えるための貯蔵穴として利用していたことがわかった。当遺跡は、縄文時代中期一四千五百年ほど前一の村の跡で、猪苗代湖西岸の中心をなした村と考えられる。

(二) 台畑遺跡(福島市)

宅地造成に伴い、昨年度から継続調査されている。発見された遺構は、奈良〜平安時代の竪穴住居跡五十三棟、掘立柱建物三十二棟、平安時代の水田跡そして溝跡、奈良時代の須恵器窯跡などである。平安時代の住居跡群と水田跡が近接して発見された例は県内では珍しく、貴重な遺跡である。

(三) 深渡戸B横穴群(表郷村)

表郷村第二工業団地造成中に発見された七世紀末から八世紀前半の横穴古墳群一墓地一である。二十六基の横穴が調査され、十七体の人骨をはじめ、土師器一杯、椀、蓋一、須恵器一杯、蓋、長頸壷)そして鉄製品一刀子、鍬、小刀)が検出された。入口(羨道)部から枝状に分かれる複数の玄室一棺を納める室)を持つこれらの横穴群は、県南地方の特色をよく示している。

(四) 東館跡(矢祭町)

矢祭町東館跡では、郭、空堀、建物、橋など、中世山城の諸施設が発見されている。中でも東西七間、南北三間の掘立柱建物や空堀に架けた橋の跡などは、県内でも有数のもので、今後の山城調査に多くの示唆を与えた。

(五) 日渡台畑遺跡(会津坂下町)

県営ほ場整備事業により、調査された。発見された遺構には、幅五心の薬研堀と一部それに囲まれた内側から中世墳墓群、火葬骨をもつ土坑墓、集石墓、茶毘跡などがあり、また、土坑墓からは布に包まれた輸入銭、六文銭、十四世紀前の古瀬戸、珠洲系・常滑系の陶器などが出土し、貴重な資料となった。

(六) 遺跡の発見

東村釜子地区や西郷村内で土地造成により前期旧石器時代一今から三万年以前)の石器が発見された。県内では現在のところ最古の石器と考えられており、本県の前期旧石時代の研究の進展が期待される。

 

法正尻遺跡より発見された土器

法正尻遺跡より発見された土器

 

深渡戸B横穴群(入口部から枝状に分かれた玄室前)

深渡戸B横穴群(入口部から枝状に分かれた玄室前)

 

 

 

 


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