教育福島0143号(1989年(H01)11月)-044page

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養育教育センター通信

 

養護教育と児童生徒の「診断名」

〜その正しい理解のために〜

 

一、はじめに

養護教育で用いられる言葉は、一般の教育で使われるものより専門的で分かりにくいものが多いのではないでしょうか。このことは養護教育の置かれている立場と無関係ではありません。つまり養護教育では、医療や福祉などとの連携が必要とされ、特に医療とは切り離して考えることができないほど密接な関係にあるからです。

ここではそのような言葉の中から医学の分野で用いられている「診断名」が教育にどのようなかかわりがあり、どのような意味を持っているかについて考えてみたいと思います。

 

二、「診断名」とは

「診断」とは、一般にも広く使われていることばですが、もともと医学用語として用いられてきたものです。

「診断」についてもう少し詳しくみると、「医師が患者を診察し、その症状から病名をつけ、有効な治療法を得るために行うこと」をいいます。そして症状につけられた名前が「診断名」といわれるわけです。例えば「脳性まひ」とか「気管支喘息」等がこれに当たります。

これに似たことばに「障害名」があります。「障害」とは「遺伝や外傷、中毒、病気などにより、肉体あるいは精神が健康な状態にもどらず、どこかに損傷が残ったりして、働きがうまくいかなくなり、そのままでは生活していくのに不自由な状態」のことです。このような状態を類型化して呼んだのが「障害名」です。例えば、「視覚障害」「青緒障害」等といった使い方をします。

したがって「診断名」と「障害名」は本来区別すべきものですが、区別されないまま使われていることも多くみられます。

ここで注意していただきたいことは、「診断名」にしろ「障害名」にしろ単に病気に「レッテル」をはるのが目的ではなく、治療や教育の方針・内容を決めることがねらいであるということです。

 

三、「診断名」の意義

医療や教育において「診断名」はどのような意義があるのでしょうか。

1 医療の立場では

1)「診断名」がはっきりするということにより、治療の方法が明確になります。

2)病気の進行や治療の効果について、ある程度予測ができます。

3)「診断名」により、医師の相互理解がしゃすくなります。

これらの他にもまだまだありますが基本的には以上のようなことであると思われます。

2 教育の立場では

(1) 子どもの理解のために

特に養護教育で子どもを理解するためには、医学の知識が不可欠になります。「診断名」によって子どもの障害が、器質的な障害(からだの損傷など)か、機能的な障害一からだの働きの障害など)かといったことが明確になります。そのことは直接、指導内容や方法に関係してくることなのです。

しかし同じ「診断名」でも障害の現れ方や程度は、一人一人みな違うということに留意していただきたいのです。子どもはそれぞれに個性があり、興味・関心といったことも皆違っています。また、教育歴や育った環境の違いによっても子どもの持っている能力は違ってくるわけです。

もちろん、子どもを理解するには、この他にも発達の状況、知的能力、運動能力、生格といった諸要素を総合してみる必要があることは当然です。

(2)適切な指導のために

「診断名」によって子どもの一般的な行動の傾向や危険な状態をある程度予測することができます。もちろん予測するといっても、子どもには個人差があり、その時の状況等も関係するので、一概にはいえません。しかし、「診断名」を知れば事前におよその対応策を立てることができます。それによって学校全体での協力体制を作り、子どもに適切な課題を準備し、楽しく豊かな学校生活を送らせることができます。また、子どもの生命や身体に危険が及ぶことを防ぐこともできるわけです。

 

四、「診断名」の正しい理解

ここでは具体的な事例について取り上げ「診断名」を理解することの必要性について述べてみたいと思います。1 最近学校で問題になっているものに「学習障害」があります。この「診断名」を持つ子どもを、文字の上から想像すると、「出来の悪い子ども」や「物覚えの劣る子ども」といったことが頭に浮かぶのではないでしょうか。

しかし「学習障害のある子」と呼ば

 

 

 


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